生活の中にリハビリを取り入れる「生活リハビリ」とは?

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「リハビリ」と聞くと、理学療法士や作業療法士などの専門職が行うイメージがあると思います。リハビリは長い時間を掛けて徐々に身体を変えていく必要がありますが、専門家が実際にリハビリを行える時間には限りがあり、全体の生活のうち、ごくわずかな時間だけです。そこで、実生活で家族を中心に行う「生活リハビリ」という考え方があります。

今回は、そんな生活リハビリという考え方についてお伝えします。

生活リハビリとは?

生活リハビリとは、対象者の残存能力を正確に見極め、最大限活用する生活をすることで、普段の生活そのものがリハビリになることを目指しています。日常生活上の動作をリハビリと捉え、自分でできることをできる範囲で行います。専門家が関わる以外の普段の生活の時間にもリハビリの概念を取り入れ、トイレや入浴、食事などの日常生活動作をできるだけ自分の力で行います。

  • 一日中テレビの前で座って過ごしている
  • ほとんどベッドに横になって過ごしている

このような生活を送っていると体の筋力や体力が低下してしまい、徐々に日常生活で出来ることが少なくなってしまう可能性もあります。そうならないように生活リハビリで日常生活に必要な動作や身体機能を維持することを目的としています。

生活リハビリで注意すべき点は、

  • 専門家に残存能力を適切に評価してもらい、連携して内容を決めること
  • 福祉用具や自助具などを活用し、マンパワーに頼り過ぎず環境を整えること
  • 誤嚥や転倒などの身体的危険がないように行うこと
  • 家族や本人の過剰な負担にならない範囲で生活の中で最大限、残存機能を活用すること

です。短期的に無理をして、被介護者、介護者ともに精神的・身体的に苦しい状況を作ってしまっては続けることができません。負荷量の調節がとても大切になります。

 

生活リハビリの内容

ここでは3つの生活リハビリについて具体的に事例をご紹介します。

1、食事

食事の際に姿勢の維持(座る能力の維持)、箸の使用、噛む、飲み込むなどの動作を鍛えることができます。

ベッドで背もたれを上げて食事を取れるのであれば、歩行器や車椅子を使用し、食卓まで移動して食べるようにすることで、より残存機能を活かすことができます。食事の際に、自助具を使ったり、座る姿勢を飲み込みがしやすいように調整しながら、できるだけ自分で食事が取れるようにすることも大切です。普段介助している食事の動作を介助なしで行う場合、飲食物をこぼしてしまったり、いつもより時間がかかったりすることも多いですが、

  • 食事用エプロンをする
  • 周りにあらかじめビニールを敷いておく(タオルも用意しておく)
  • 時間の余裕を持って食事を始める

ことで対策することもできます。

2、排泄

トイレまでの移動や便器に座ったり立ち上がったりする動作は、移動能力の維持に繋がります。福祉用具(手すりや歩行器、杖など)を使用することで、より安全に移動することができます。便器の周りに簡単に設置できる据え置き型の便器用手すりなども活用し、できる範囲でトイレに行く習慣を維持します。また、おむつ交換が必要な場合でも、体位変換を声掛けして自分で行ってもらったり、お尻を挙げる動作も自分で行ってもらうことで運動に繋がります。トイレでの排尿や排便は、腹圧が関係しているため、やや前かがみの姿勢を維持することで行いやすくなります。

3、入浴

更衣動作は自分で立ってできない場合は洗面所に椅子を置き、座って行うことで自分である程度できる場合もあります。洗体の際も、背中を洗う、足先を洗うなどは難しい場合でも、身体の一部(胸やふとももなどの手が届きやすい場所)であれば自分で洗うことができる場合もあります。また、入浴は体温の上昇とともに心拍数が上がるため、軽い運動と同等の有酸素運動になるとの報告もあり、全身持久力の向上にも繋がります。

生活リハビリのメリット

生活リハビリを意識した介護を行うことで、

被介護側にとっては、

  • 身体機能の維持
  • 生活動作の維持、生活意欲・尊厳の向上
  • 日中活動量の増大による生活リズムの改善

がメリットになり、介護者にとっては、

  • 介護負担軽減(過剰な介護を抑制する効果)
  • 被介護者の的確な身体状態の把握

がメリットになります。

しかし、最低限介助が必要な範囲は介護を行い、あくまで余剰な介護を減らしてその分被介護者の残存能力を活用することが生活リハビリの要点になるので、「被介護者の身体機能の的確な評価」がベースとなり、それができていない場合は逆に過剰な負担を本人や家族に強いてしまう可能性があることに十分注意しなければなりません。

まとめ

専門家でなくても、日常生活動作の中にリハビリの概念を取り入れることで維持目的のリハビリを行うことができます。その際には、「被介護者の残存能力を適正に評価すること」が大切になります。合わせて、日常生活の動作を細かく分解し、危険がなく(誤嚥や転倒など)、できるパートは本人に行ってもらうことが生活リハビリになります。

例えば、「入浴」という日常生活動作は、

  1. 浴室まで移動する
  2. 更衣(服を脱ぐ)
  3. 洗体・洗髪
  4. シャワーor浴槽に浸かる
  5. 身体の水分を拭く
  6. 更衣(服を着る)
  7. 髪を乾かす

とパートごとに分けることができます。

立った状態や移動している状態を一人にしてしまうと転倒の危険があるため、椅子を使って更衣動作を自分でしてもらうようにすることで生活の中にリハビリの要素を取り入れることができます。是非参考にしてみてください。

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