「パーキンソン病」
一度はこの病名を聞いたことがあるのではないでしょうか?
最近は患った方がブログやSNSなどを通じて闘病日記や日々の声を掲載したり、家族による介助方法やリハビリテーションのポイントが広く知られるようにり、耳にする機会が増えた病気です。
そもそもパーキンソン病はなぜ起こるのでしょう?
私たちは、頭の中にある大脳皮質と呼ばれる脳の部位から運動の指令を筋肉に伝わることによって、体を動かすことができます。
この大脳皮質からの指令を調節し、体の動きをスムーズにしているのが、信号を伝達する役割を持つ神経伝達物質の1つ「ドパミン」です。
パーキンソン病は、中脳の黒質と呼ばれる部位にあるドパミン神経細胞が機能不全となり、本来生成されるはずのドパミンが減ることによって発症します。
パーキンソン病の特徴
全体数
パーキンソン病は、約1/1000人の割合で発症し、国内では推定患者数が12万人を超え、アルツハイマー病に次いで多い神経変性疾患といわれています。その発症の好発年齢は50〜70歳であり、65歳以上の有病率はその数倍になるため、超高齢社会の現代では患者数が増加するだろうと言われています。
(――『平成24年度衛生行政報告例の概況 特定疾患(難病)関係』厚生労働省 平成25年10月24日)
治療法
残念ながら、現時点では「根本的に」病気を治す治療はありません。
治療は脳内で不足するドパミンを補うL-dopa(レボドバ)療法や補助的な薬剤を使う薬物療法が中心になります。
また手術療法としては「脳のペースメーカー」と言われるような、脳の深部に刺激を入れる「脳深部刺激療法(DBS)」が代表的です。
他にも便秘や排尿障害などの非運動症状に対する治療も行います。
パーキンソン病の症状
振戦(しんせん)
何もしていない時に手足が震えてしまう症状です。
睡眠中は震えがおさまりますが、起きている時は特に片方の手や足から震え始めることが多いです。
パーキンソン病の初期症状としても有名です。
固縮(こしゅく)
手や足、肩や指などの筋肉が固くなってスムーズに動かしにくい症状です。
痛みを感じることもあります。筋肉が縮んだり伸びたりするバランスが崩れ、関節を動かす際に「カクカク」と抵抗を示す症状です。
姿勢反射障害
体のバランスが取りにくく、首を前方に突き出し上半身が前かがみになり、膝を軽く曲げた前傾姿勢を取るのが特徴的です。
歩行障害
歩行時に様々な症状が見られます。それらを総称して歩行障害といいます。
- すくみ足・・・歩き初めの一歩の足が出ない
- 小刻み歩行・・・前かがみで床を擦るように小刻みに歩く
- 加速歩行(突進現象)・・・一旦歩き始めると上体が前のめりになって加速して止まれなくなる
パーキンソン病の日常生活での問題点
上記で挙げた症状は比較的緩やかに現われてくることが多いのですが、どれも生活上では問題となることが多いです。
また上記以外の症状として、自律神経症状である
- 便秘
- 起立性低血圧
- 発汗
- むくみ
などが現れます。これらも日常生活では問題となります。
例えばベッドから起き上がる際に起立性低血圧によって立ちくらみが出現して転んでしまったり、体が熱く発汗が多くなることに対しての温度調整や頻回の着替えが必要になったりと、生活環境の細やかな調整が必要となります。
さらに、食べたり飲み込んだりする機能(摂食嚥下機能)の低下によって、食事が上手に噛めなかったり、飲み込んだ時にむせ込んでしまったりしてしまい、食事量の低下や脱水、肺炎の危険性が高まることもあります。
歩行障害の改善方法
パーキンソン病の患者さんは、何らかの外部刺激があると歩行のリズムが取りやすくなることがあります。
例えば、視覚刺激では横断歩道などの目印になるようなものをまたぐよう促したり、聴覚刺激ではメトロノームなどのリズム音などの合わせて歩くなど、外部刺激による代償が効果的と言われています。
まとめ
パーキンソン病は、約1/1000人の割合で発症する「極めて稀」とは言い難い、身近に起こりうる疾患の1つです。
しかしながら根本的な治療法がまだ確立されていない難病であり、医療従事者による日々の治療法の研究やリハビリテーションの工夫、介護者への適切な介護指導などが強く求められています。
また、罹患した患者さんの精神状態は複雑で、うつ状態になることもあります。
まずは、
- パーキンソン病とは何か?
- どのような症状があるのか?
ということを理解し、精神的なケアに十分配慮しつつ、症状にあった適切な対応を医療者と家族・介護者が連携して行なっていくことが重要です。