第53回日本作業療法学会in福岡で発表しました

第53回日本作業療法士学会 作業療法士 日本作業療法士 学会 OT

先日、福岡県で開催された「第53回日本作業療法学会」に参加してきました!
弊社では学会などで在宅分野の活動を積極的に発信しており、今回の学会では4名のスタッフがポスター発表を行いました。
「在宅分野」とは一口に言っても、「電気刺激療法と作業療法の併用」から「新たな評価尺度の開発」、「病院との連携」などバラエティに富んだ発表となり、在宅分野の「おもしろさ」という点も伝えられたかな、と思います。

発表1│慢性重症片麻痺のご利用者が紐を結べるようになった事例の報告

第53回日本作業療法士学会 作業療法士 日本作業療法士 学会 OT ポスター発表

NESS H200(装具型機能的電気刺激装置システム)という機器を使って、慢性重症片麻痺のご利用者の生活を拡充した事例について発表しました。
NESS H200とは、人間工学に基づいて、患者の症状やリハビリテーションの段階に応じてきめ細かく電気刺激を設定できるコントロールユニットのことです。
NESS H200は近年、リハビリテーション病院を中心に普及が進んでいますが、在宅でのリハビリテーションでの介入成果の報告はまだまだ少ないのが現状です。
そこで今回、慢性重度片麻痺のご利用者に対して作業療法と電気刺激療法を併用し、生活行為の拡大を促しました。
ご利用者の生活行為の目標は「畑仕事の際、高い棚に紐を結べるようになる」で、開始当初は装具を工夫し、電気刺激に慣れることからはじめました。
次に、作業療法による生活場面で麻痺側上肢を使える環境づくりと電気刺激療法を併用したプログラムの実施を試みました。
その結果、生活場面で麻痺側上肢の使用が増え、棚の紐を結べるようになりました。
<石野(メディケア・リハビリ訪問看護ステーション大東)>

発表2│慢性重度片麻痺の利用者が料理の食材を切れるようになった事例の報告

第53回日本作業療法士学会 作業療法士 日本作業療法士 学会 OT ポスター発表

石野OTに続き、慢性重度片麻痺の利用者にNESS H200(装具型機能的電気刺激装置システム)を用いた事例です。
この発表では、「料理」に焦点を当てた訪問作業療法を実施した結果を報告しました。
この方の目標は「食材を(麻痺側の手で)押さえて転がらないようにして切ること」でした。
本人の生活習慣を損なわず、不快にならない程度を考えながらNESS H200での電気刺激療法と合目的的活動を行いました。
約3か月後、ご利用者は麻痺側上肢について
「右手で物を固定しやすくなった」
「以前よりも右手を意識するようになった」
と語り、それから更に1ヶ月半後にはペットボトルを体幹と麻痺側を利用して押さえ、非麻痺側でペットボトルのキャップを開閉できるようにまでなりました。
今では、台所に立って食材を切り始めています。
<宮村(メディケア・リハビリ訪問看護ステーション大東)>

発表3│ご利用者が退院した病院との連携についての報告

「在宅復帰後の患者情報を病院と在宅で共有する当訪問看護ステーションの取り組み-リハビリテーション経過報告書-」をテーマに発表しました。
えびすリハビリ訪問看護ステーション西宮で取り組んでいる「リハビリテーション経過報告書(ご利用者が退院された病院へ、現状の情報を提供する書面)」について、実際に情報を提供した病院のセラピストへアンケート調査を実施し、その結果を報告しました。
現在、在宅の現場から、退院した病院へ患者の情報を提供する取り組みはほとんどなく、アンケート結果では「とても有意義な取り組みである」との結果でした。
また、提供する情報として、

  • 現在の介護状況や利用介護サービスの種別
  • 住環境の状況
  • ご自宅でのリハビリの詳細

などの項目があればより有益であるとの回答もありました。
今後、より良い情報提供となるよう報告書の内容を再考していく予定です。
<松井(えびすリハビリ訪問看護ステーション西宮)>

発表4│大阪府立大学院と共同で開発した新しい評価尺度についての発表

大阪府立大学大学院と共同で開発中の評価尺度について、これまでの研究結果を「被介護者のADL能力を評価可能なSelf Assessment Burden Scale-Motorを介護士が評価した場合の妥当性の検討」と題して報告しました。
このSelf Assessment Burden Scale-Motorは、家族や介護士(ヘルパー)の方でも簡単に被介護者の日常生活活動(ADL)能力を評価することができるものになっています。
リハビリ職種が関わっていない地域に暮らす被介護者のADL能力を、家族や他職種の方が定量的に、かつ、簡単に評価できることで、リハビリテーションの早期介入やリハビリ終了後のフォローアップに繋げられると考えています。
地域に暮らす被介護者を対象にしたこれまでの研究結果として、Self Assessment Burden Scale-Motorを用いることで家族でも介護士の方でも評価できることが示唆されており、今回は特に介護士の方が評価した場合の結果を報告しました。
聴講いただいた方からは、研究的な側面と臨床的な側面でとても建設的なご意見をいただき、今後の参考にしたいと思います。
地域に暮らす被介護者を支えていくには、多職種連携が重要です。
このSelf Assessment Burden Scale-Motorが、その一助になればと考えています。
<蕨野(メディケア・リハビリ訪問看護ステーション サテライト城東)>

今回の作業療法学会について

第53回日本作業療法士学会 作業療法士 日本作業療法士 学会 OT ポスター発表

石野:
自分が知らない新たな福祉機器などが展示されていました。実際に体験もでき、今後の活動分析に使ったりできるな、と感じました。

宮村:
発表では働く領域の違うセラピストから様々な考え方や意見を聞くことができ、自分では思いつかないことの発見になってとても良い機会でした。
今回の経験を生かして、いま自分が業務で行っていることに疑問を持ち、ご利用者の希望に柔軟に対応していきたいと思います。

松井:
今回の学会では、発達分野の発表が多かったように思います。シンポジウムの内容もとても勉強になりました。
また、近年進んでいるロボット開発についての基調講演もあり、時代の流れを直に感じました。

蕨野:
学会全体では、発達障害児に対する講演や発表が多くあった印象です。
それだけ臨床現場でのニーズが増えてきているのだと思います。
私も「発達性協調運動症(DCD)に対する作業療法」というシンポジウムに参加し、DCD児に対する評価や介入方略について学ぶことができました。系統的に評価方法や介入方略が整理されており、最後に事例報告もあったので、とてもイメージしやすく拝聴しました。
事業所での勉強会などでスタッフと共有していきます。

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