高齢者の生活・身体状態を示す言葉として、
- ロコモティブシンドローム
- 廃用症候群
などたくさんありますが、今回はその中でも「フレイル」について説明します。
厚生労働省は、75歳以上の人を対象に行う健診で活用されている現行の質問票に代わるものとして、「フレイル」の状態になっているかチェックする「後期高齢者の質問票」を2020年度より導入すると提唱しており、今再び注目されている言葉です。
フレイルとは
フレイル(Frailty:英)は、日本老年医学会により提唱されている言葉で
- 虚弱
- 老衰
- 衰弱
- 脆弱
と訳されます。
つまり「フレイル」とは、
健康な状態から要介護状態に至るまでの過程にある
- 身体的
- 精神的
- 心理的
- 社会的生活
を含む広範囲の高齢者の状態を指します。
具体的には、
- 移動能力
- 筋力
- バランス
- 運動処理能力
- 認知機能
- 栄養状態
- 持久力
- 日常生活の活動性
- 疲労感
などの要素が含まれています。
「フレイル」という言葉には、しかるべき介入により、再び健常な状態に戻るという可逆性が包含されている、とされています。
日本老年医学会では、「フレイル」に陥った高齢者を早期に発見し、適切に介入をすることにより、生活機能の維持・向上を図ることが期待されていることから「要介護状態に陥るのを防げる効果がある」と対策を呼びかけています。
今までの言葉との違い
今までの高齢者の体の状態を表す言葉は、「筋肉に限定したもの(サルコペニア)」、「運動器に限定したもの(ロコモティブシンドローム)」などがありましたが、フレイルはもっと広範囲を適応とする言葉であり、高齢者が要介護状態にならないためには、様々な側面から生活を見直していく必要があることを示唆しています。
実際、人の生活は多種多様なバランスで成り立っています。
ご飯を食べられなければ、運動をすることもできなくなりますし、家族関係が変わることで体調を崩すこともあります。
いろいろな要素が複雑に絡み合った結果、人の生活・身体状態が形成されています。
先ほどご紹介した、移動能力・筋力・バランスなどに加えて、厚生労働省が公表している「フレイルチェックリスト」では、
- 毎日に生活に充実感がない
- 自分が役に立つ人間だと思えない
- わけもなく疲れたような感じがする
など「こころ」に関する項目も挙げられており、身体だけでなく、より包括的に健康を捉えていることがわかります。
まとめ
フレイルは、健康な状態と要介護状態の境目の状態にあることを指し、身体だけでなく、精神的・心理的・社会的など広範囲の高齢者の状態を含みます。
筋力が強ければそれで健康が守れるかというと、そうではありません。
人間は社会的な生物であり、多様な要素がお互いに関係しあって健康や生活が守られています。
広い視野で健康を捉える言葉として「フレイル」が注目されています。