”拘縮”(こうしゅく)とは、なんらかの原因により、関節が正常な範囲で動かなくなってしまった状態のことをいいます。
関節を動かさず、寝たきりの期間が長く続くと体の関節が固まってしまうことがあります。
今回は、この"拘縮"についてお話します。
関節運動とは?
人の体には足首や肩など、260個以上の関節があると言われています。
そのたくさんの関節の主要な機能として、”関節運動”があります。
関節運動は、関節の種類によって異なります。
たとえば肘(関節)は、
- 曲げる
- 伸ばす
の二軸性の関節です。
このような関節ごとの関節運動が難しくなった状態のことを"拘縮"あるいは、"関節可動域制限"と呼びます。
関節ごとに、「日本整形外科学会・日本リハビリテーション医学会」が定める”参考可動域”というものがあります。
この可動域が出ない関節は、何らかの異常があると推測されます。(もちろん年代などの因子よって個人差があります。)
参考可動域の詳細:「関節可動域表示ならびに測定法」日本整形外科学会・日本リハビリテーション医学会(1995 年)
軟部組織とは
関節が正常に動かなくなる原因には様々なものがありますが、その中で、軟部組織性の関節可動域制限を一般的に"拘縮"と呼びます。
軟部組織とは?
軟部組織とは、
- 腱
- 靭帯
- 皮膚
- 脂肪組織
- 血管
- 筋組織(筋膜、横紋筋・平滑筋)
- 末梢神経組織(神経節、神経線維)
の総称のことです。
これらの組織が何らかの原因で異常を起こしていると、拘縮が発生することになります。
拘縮の代表的な原因
- 廃用症候群などの不動によるもの
- 筋緊張の異常な亢進(痙性など)
- 疼痛による長期間の不動によるもの
- 浮腫
- 皮膚組織の短縮(火傷のケロイド、外傷による皮膚組織の瘢痕化など)
- 靭帯損傷後
- 脳卒中後遺症などによる運動麻痺
主にこれらの原因で軟部組織の変性が起きると、正常な関節運動が出現しにくくなります。特に廃用症候群、いわゆる”寝たきりの状態”で拘縮が起きることは広く知られています。
上述のどの原因も、結局は関節が長期間体を動かせない状態になるため、拘縮が発生しやすくなります。
よって、関節をしっかりと動かす運動を行うことが大切になります。
拘縮があるとなぜ困る?
今ではあまり見かけませんが、和式便器で用を足す時も足首がしっかりと曲がらないと座れません。
歩行でも、股関節がしっかりと動かないと歩幅が小さくなってしまいます。
寝返りをする時も、股関節が内旋(いわゆる内股)する必要があります。
このように、関節がしっかりと動かないと日常生活で行う動作に支障が出ます。
- その拘縮によってどんな動作が障がいされるのか?
- その動作が障がいされると、日常生活にどんな問題があるのか?
を考えて、拘縮に対してリハビリの中で改善を図っていきます。
一方、骨の変形などによりストレッチや関節の運動では改善が困難で、手術などが必要な場合もあります。
これは拘縮ではなく"強直"(きょうちょく)と言います。
- 「拘縮」・・・徒手的に改善が可能な原因による関節可動域制限のこと
- 「強直」・・・徒手的に皮膚の外から触るだけでは改善が困難な関節可動域制限のこと
拘縮予防の方法
それでは、"拘縮"を予防するためには、どうすれば良いのでしょうか。
関節可動域練習
関節を徒手的に動かすことで関節の可動域を維持します。
ROM(Range Of Motion:レンジ・オブ・モーション)と呼ばれます。
動作練習
原因のところで述べましたが、後天的な拘縮はほとんどが関節の不動によって発生します。
よって、各関節を日常生活の中でしっかりと関節を動かすことが最善の予防策になります。
例えば、仰向けで長時間寝ている方は、足首の関節が下向き(底屈)に拘縮してしまうことがあります。
そういった方には、リハビリの中で立つ練習をすることで、自然と足首の関節が動かされることになり、関節の可動域を維持することができます。
ポジショニング・体位変換
臥床状態が続いている方の場合、足の下にクッションを入れたり、数時間ごとに体位を変えたりすることで特定の関節に拘縮が生じるのを防ぎます。
まとめ
"拘縮"とは、正常な関節運動が出なくなった関節の状態のことをいい、原因は様々な要因による関節の不動が長期間続いたために起こることがほとんどです。
一方、徒手的に改善が困難なものは"強直"と呼ばれます。
"拘縮"を予防するためには、
- できるだけ日常生活のなかで各関節をしっかりと動かす
- 他の人が徒手的に関節を動かす
などで予防していく必要があります。
筋肉だけでなく、関節にとっても運動はとても重要なものです。
ぜひ参考にしてみてください。