筋力低下だけではなく、全身に症状が出る「廃用症候群」とは?

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何らかの障害や環境により、体を動かす機会が減ってしまうと「廃用症候群」を発症する可能性があります。

そもそも介護予防やリハビリの大きな目標の一つとして、この「廃用症候群」を予防することが前提にあります。
今回は、そんな「廃用症候群」の予防方法やリハビリについてご紹介します。

廃用症候群とは?(定義)

廃用症候群とは、「身体の不活動によって引き起こされる二次的な障害の総称」と定義され、
「どの疾患があるから…」「何日寝たきりだったから…」といった具体的な指標はありません。

したがって、以下に挙げる症状が出ていて、且つ医師が「廃用症候群」と診断することで確定となります。

廃用症候群の症状

廃用症候群では多岐にわたる症状が出現します。
一番イメージしやすいのが、筋肉や骨、関節などの運動器への障害です。

運動器の障害では、

  • 筋萎縮(筋力低下)
  • 筋肉の伸張性の低下(外傷・怪我しやすくなる)
  • 骨密度の低下(骨折しやすくなる)
  • 関節拘縮・可動域の低下

などが主にあります。

日常生活での筋肉の収縮量が常に20%以下であると、筋力は徐々に低下します。
また、絶対安静状態にある場合、筋収縮が行われず、1週間で10~15%程度の筋力が低下するとの報告もあります。

全身性の症状

廃用症候群の場合、運動器だけではなく、その他の全身の様々な場所に症状が現れることが特徴です。
特に長期間寝たきり状態にある方の場合、運動器だけの問題だけでなく、体の他の部分にもなにかしらの問題が出てくることがあります。

起立性低血圧

人体の内臓には重力を利用することで適切に負荷が掛かり、正常な機能を維持しているものがたくさんあります。
人が立っている時、心臓は血液を頭まで送るために収縮し、血液をポンプ(吸い上げる)します。
これが常に寝ている状態だと、このポンプする力が十分に使われないため、弱ってしまいます。
結果、起立性低血圧(起き上がる時に血圧が著しく低下してしまう)などの症状が出現するようになります。

排尿・排便障害

また、人体は排尿・排便する際にも膀胱などが重力を効果的に使い、尿や便を体外へ排出します。
寝たきりになるとこれらの機能が低下し、排尿障害や便秘などの症状が高確率で出現します。

認知機能低下・精神状態の変化

屋内で長期間寝たきりのままになると、外界からの刺激(光・匂い・音など)の量が極端に低下します。
また運動する機会が減ることで、関節や筋肉からの体性感覚(触覚や圧覚)などの刺激も脳に入力される機会が減少します。

脳は普段、外界からの刺激が適切な負荷となって、それに反応することで正常な生理的反応が維持され、機能が保たれています。
しかし、光や音、匂いといった刺激や運動する機会が減少することで、

  • 認知機能の低下や認知症
  • 精神状態の変化
  • 鬱(うつ)
  • 幻想や妄想

などが出現する可能性があります。

廃用症候群の予防

「廃用症候群」の認識が世間に広まったことで、現在では入院中も「できるだけ体を動かす」ということが鉄則になっています。
廃用症候群を予防するためには、当たり前ですが、日常生活の中で積極的に体を動かすことが一番の予防方法です。
脳卒中などの一次的障害は、障害部位や病巣により回復がある程度既定されてしまいます。
しかし、二次障害である廃用症候群は、適切な対処が行われることで完全に予防することができます!

なんらかの疾患や痛みがあったり、体が動かしにくい状態にある場合、その原因を少しでも解消することが廃用症候群を予防する第一歩になります。
さらに、重力に抗して姿勢を維持する(抗重力位)ことで廃用症候群を予防することができます。
普段寝たきりの状態にある方でも訪問看護や訪問リハビリなどを上手く活用することで、座った姿勢や立つ姿勢を日常生活の中で行うことができ、不活状態を緩和することができます。

参考文献)不動・廃用症候群(著:園田 茂)

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