「健康」というと「身体の状態のこと」だと考える人が多いと思います。
しかし、身体は「精神状態(心)」と密接に関係しています。さらに食事や運動だけでなく、「社会的な付き合い」も大きく関係していることが最近の研究で分かってきました。
人間と他の動物が健康に生きるという点で最も違うのは、社会性があるかどうかなのかもしれません。
「社会性」は古来より人類にとって必要不可欠なもの
生物的には決して強い生き物ではない人類が地球上でここまで繁栄しているのは、人類が社会性を獲得したからだと言われています。
鋭利な牙も頑丈な皮膚もない、個体では決して強くはない人類がチームを作り、集落を作り、やがて国単位の集団(社会)を作っていくことで、他の生物と対等以上になることができたのです。
人間にとって社会性は強力な武器でもあり、原始の頃から群れでいることで安全が担保されてきた側面があります。
現代でも、社会的交流を持つことは精神的な安心だけでなく、健康においても大きく関係しているそうです。
食事や運動とおなじくらい健康に必要な「社会的な付き合い」
米国科学アカデミー紀要(PNAS)で発表された論文により、若いころから「社会との強い結びつき」を維持することは、病気のリスクを低下させ、人生のあらゆる段階における健康状態に影響することがわかりました。
社会的なつながりの指標には、
- 個人がどれだけ社会に溶け込めているか(社会的統合)
- 社会的サポートがあるか
- 社会的負荷があるか
の3つに重点がおかれ、
- 炎症反応
- 高血圧
- 肥満
との関連性を調べました。
結果、「社会に溶け込めているか」の指標は特に若年期と老年期に影響するそうです。
- 若年期(15歳~34歳)・・・この頃に幅広い社会関係を築くことは、健康な食事や運動をするのと同じくらい重要なことです。
- 老年期(65歳~)・・・老年期に社会的孤立をすることは、高血圧のリスクに大きく関連することが示されています。
子育て世代などの30歳代〜40歳代の壮年期(厚労省の定義では33歳~40歳)から中年期(40歳~64歳)にかけては、
社会関係の広さよりも、
- 社会的サポート
- 社会的負荷
の方が、バイオマーカーとの関連が大きかったそうです。
幅広い社会関係は、若年期と老年期の健康に関係性が大きいですが、壮年期〜中年期は社会関係の量よりも質が重要であることが示されています。
社会的な付き合いを築き、より健康に
近年の研究では健康の調査として、個人の身体や精神状態だけでなく、個人の身体の外、つまり社会関係や周囲の環境の重要性が報告されるものが増えてきています。
人生100年時代といわれる昨今、今後の長い人生をどのように生きるのか、人生の質が身体と心の健康を維持するための重要なファクターになってきます。
心身の健康維持のために運動や食事にのみ注意するのではなく、自身や大切な人など周囲の人間関係社会的交流まで視野を広げ、健康管理に活かしてみてはいかがでしょうか。