だ液の役割は消化だけじゃない!私たちの体を守ってくれる縁の下の力持ち

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だ液とは

「だ液」は口の中をうるおすだけでなく、口内の細菌の増殖を抑え、虫歯や口臭などさまざまなトラブルから私たちを守ってくれています。
さて、今回はそんな「だ液」が持つ主な働きや、分泌される仕組みなどをご紹介します。

だ液はどうやって出ているの?

だ液は「交感神経」と「副交感神経」が主にコントロールしています。
ストレスがない時(=副交感神経が働いているとき)はサラサラしただ液が耳下腺から分泌されます。
逆にストレスがあるとき(=交感神経が働いているとき)はネバネバしただ液が舌下線から分泌されます。
サラサラのだ液とネバネバのだ液は用途が異なり、どちらも必要なものですが、ネバネバのだ液ばかりが出ていると口内が乾きやすくなって、口内で細菌が繁殖しやすくなったり免疫機能が低下したりと体に様々な影響を及ぼします。

だ液ってどこから出ているの?

だ液は口の中のいろいろな所から出ています。
出る場所によってサラサラだったりネバネバだったりと、だ液の種類も違います。

大唾液腺

たくさんのだ液を出す大きな唾液腺です。
1. 耳下腺
  サラサラしただ液を出します。上の奥歯の頬側にあります。
2. 顎下腺
  サラサラとネバネバ、両方のだ液を出します。舌の下にある小さなふくらみ「舌下小丘」にあります。
3. 舌下線
  サラサラとネバネバ、両方のだ液を出しますが、ネバネバの割合が高いです。
  「舌下小丘」の周りと舌下襞にあります。

小唾液腺

歯と歯肉以外の粘膜のいたるところに存在している小さな唾液腺のことです。
上顎や舌の付け根、唇の内側などにあります。

だ液の役割

自浄作用

だ液は、歯の表面や間に着いた食べカスや歯垢など、口の中にある汚れを洗い流す役割があります。
この自浄作用の機能が落ちると、細菌が増殖し、虫歯や歯周病になりやすくなります。
また、口臭がきつくなる原因にもなります。

免疫力を保つ

目、鼻、口など体の部位で外に空いている所は、侵入してくる細菌やウイルスなどを防ぐ動きがあります。
目なら瞬きや涙、鼻なら鼻毛や鼻水などがあり、万一侵入してきても「免疫力」により防御してくれます。
そして、口にはだ液に含まれる「リゾチーム」という「抗菌作用」を持った酵素があります。
このリゾチームはだ液だけでなく、涙や汗、鼻粘液、リンパ腺、肝臓、腸管などにも広く分布しており、様々な細菌感染から私たちの体を守ってくれています。

食べ物をまとめる

パンやモナカの皮、スナック菓子など、パサパサしているものをそのまま飲み込もうとすると噎せが起こったり、飲み込みづらかったりしますよね。
それを防ぐために、わたしたちは「噛むこと」でだ液を出します。
だ液が出ることで口内のネバネバ物質がパサパサの食べ物に適度な湿り気を与え、飲み込みやすいように1つの「塊」にしてくれます

食べ物を飲み込みやすくする

食べる仕組みを「摂食嚥下(せっしょくえんげ)」と言います。
特に、
① 目で食べ物を確認する
② 口に含み、噛んで飲み込みやすいように形を整える
③ 舌でのどへと食べ物を送る
④ 食べ物がのどから食道へ行く
⑤ 食道から胃へ送る
という一連の流れを「摂食嚥下5期」と呼びます。
その際、だ液は食べ物を飲み込みやすいように形を整え、のどから食道へ、食道から胃へ送る重要な役割を担っています。
食べ物をまとめる役割は上述した通りです。
のどから食道へ、食道から胃へ食べ物をスムーズに送れる仕組みは、ウォータースライダーで人がうまく滑るように、だ液によって食べ物が流れていくからなのです。

口腔内の粘膜の保護

口の中では硬い歯と柔らかい粘膜が同居しています。
喋ったり食べたりしたとき、硬い歯で口内が傷つかないのは、だ液が口の中を潤してくれているからなのです。

消化を助ける

口は体の最初の消化器官です。
「アミラーゼ」という酵素が炭水化物を分解し、消化を助けます。

味覚を感じる

味覚は、舌にある「味蕾(みらい)」という器官に食べ物の味を構成している物質が届くことで感じることができます。
この味蕾に食べ物の味を届ける役割を持っているのがだ液です。
私たちは、だ液があることで、「甘味」「酸味」「塩味」「苦味」「うま味」の5つの味を複雑に感じ、美味しくご飯を味わうことができているのです。

また、味覚は「美味しい」だけでなく、「この食べ物は安全なのか?」を一瞬で判断する大切な役割も担っています。
例えば、極端に酸っぱいものや苦いものを口に含んだとき、反射的に吐き出したことはありませんか?
味覚が「体に悪いもの」と判断すると、反射的に大量のだ液を出し、口外へ排出する機能を持っているのです。

虫歯予防

口腔内は通常、中性を保っています。
しかし、糖分を摂取すると口腔内は酸性に傾き、歯を溶かしてしまいます。これが虫歯になる原因の1つです。
だ液は、この融けた歯を治す(再石灰化)力を持っています。
ただし、歯を治す力は初期虫歯にしか効かないので、定期的に歯科へ受診することも大切です。

まとめ

だ液は食べ物の消化を助けるだけでなく、誤嚥を防いだり虫歯を予防したり免疫力を保ったりと、私たちにとって大切な役割をたくさん担っています。
健康のためにも、だ液の正常な分泌を意識しましょう。
だ液をよく分泌するには、

  • よく噛む
  • 小まめな水分補給
  • 鼻呼吸を意識する

などを心がけ、継続的に促すことが大切です。

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