年齢を重ねるにつれ、食欲が低下し「あまり食べる気がしない」ということがあります。
特に独居で生活されている高齢者の方は、有り合わせのもので食事を済まることが増えてしまい、栄養状態がよくないケースもあります。
今回は、高齢者の在宅生活における食事でありがちな「低栄養状態」についてご紹介します。
低栄養状態とは?
介護やリハビリなどの運動を行う際にも、栄養状態を考慮することはとても重要です。
栄養がきちんと摂れていなければ、リハビリやデイザービスで運動をしても体力を消耗するだけになり、逆効果になります。また、運動をしようとしたり、デイサービスに行ってみようという意欲も出にくくなります。
低栄養とは、体に必要なエネルギーやタンパク質、ビタミンなどが欠乏した状態のことをいいます。
健康な体の機能を維持できなくなり、病気や体調不良を引き起こしてしまうなど、高齢者が陥りやすい症状のひとつです。
人の身体は
- タンパク質
- 脂質
- 糖質(炭水化物)
がバランスよく摂取されていることで健康を維持できます。
しかし、これらの栄養素を十分に摂取できていないと、様々な症状を引き起こしてしまいます。
低栄養では、純粋に食事の量が低下することが問題になるだけでなく、調理が簡単で食べやすい、
- 麺類
- 白米
- パン
などで食事を済ましてしまうことによる栄養状態の不良があります。
低栄養が体に及ぼす影響
低栄養によって、以下のような症状が表れます。
- 免疫力が低下し、風邪などの感染症にかかりやすい
- 体力・筋力の低下
- 体重の減少
- むくみやすい
- 外傷、床ずれ(褥瘡)が治りにくい
- 元気がなくなる
- 抜け毛が多くなる
また、普通は食事の際に、食物からかなりの量の水分を取っているのですが、食事量が減ると同時に水分摂取も減ってしうことが多く、脱水にも注意する必要があります。
低栄養になってしまう原因
低栄養になってしまう原因には、様々な要素があるといわれています。
純粋に身体や口の問題だけなく、精神的、社会的な原因が複雑に絡まっていることがほとんどです。
例えば、私の周りでは、脳卒中を発症後、嚥下機能に若干の運動麻痺があり、ムセやすくなってしまった高齢の男性がいました。
家族と食事をするのを遠慮するようになってしまい、結果的に食事量が大幅に低下したケースなどもあります。
加齢による身体機能の変化
- 加齢による食欲の低下
はもちろんのこと、
- 味覚の低下
- 入れ歯を使用することによる咀嚼機能の低下
なども低栄養状態になる可能性があります。
また、嚥下機能や咀嚼がスムーズにできなくなることで食事に時間が掛かるようになると、それだけで長時間食べ続ける体力がない場合、食事量は低下してしまいます。
精神的な原因
精神的な原因としては、
- 認知機能の低下
- 意欲の低下
- うつ
によるものがあります。
社会的な原因
社会的な問題としては、
- 一人暮らし
- 高齢者二人暮らし世帯
- 貧困
などがあります。
パンやご飯など、炭水化物が多く含まれる食品は比較的安価なものが多い一方で、栄養バランスを考えたメニューを用意しようと思うとそれなりの出費が必要になる場合も多いです。
家計を節約するために低栄養状態になることも考えられるため、社会的な問題も考慮する必要があります。
栄養状態のチェックポイント
栄養状態を簡易にチェックする方法は以下になります。
- BMIが20以下〈BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)〉
- 欠食することがある、好きなものばかり食べている
- アルブミンの数値が4.0g/dL未満
- 半年以内に3kg以上の体重減
- 肉はほとんど食べない
- 顔色が悪くなったといわれる
気になる症状がある場合は、定期検診の際でも構いませんので、主治医に相談してみましょう。
低栄養状態への予防策
低栄養状態への予防策をご紹介します。
1日3食きちんと食べる
栄養のあるものを食べることももちろん大切ですが、低栄養状態になってしまう根本の原因として「生活リズムが乱れる」ことがあります。
低栄養状態を予防するためには、まず1日3食きちんと食べるようにすることがとても重要です。
1日3食を決まった時間にきちんと食べることで、生活のリズムが保たれます。
食事のリズムがあると、
- 食欲の維持
- 排便・排尿のコントロール
がしやすくなります。
サービスを利用する
自分で食事を用意することが難しい場合は、
- ヘルパーに作ってもらう
- 配食サービスを利用する
などの方法を検討します。まずは、ケアマネージャーなど周りの人に相談してみることが大切です。
配食サービスでは、安否確認を兼ねてお弁当を届けてくれます。もちろん栄養バランスだけでなく、味にも考慮されているため、おすすめです。人が頻繁に家庭を訪問してくれるので、社会的交流を保つきっかけになることもあります。
また、スーパーなどで売っている惣菜を利用することで栄養の偏りを最小限に抑えることも可能です。
栄養補助食品を利用してみる
どうしても食欲が出なかったり、食べる量が少ない時は主治医に相談してみましょう。
医師の指示で処方してもらえる栄養剤や食品メーカーが販売している栄養調整食品などがあります。
これらは少ない量で高カロリー、高栄養が摂取できるように作られています。
まとめ
食事と排泄、生活習慣や運動…これらは人の健康の基本となる、とても大切なことです。
独居世帯や高齢夫婦2人世帯では、特に生活リズムの乱れから低栄養状態になる可能性も高くなります。いつでも周囲に相談できる環境作りを心がけることで低栄養の予防や早期発見に繋がることがあります。
ぜひ参考にしてみてください。