医療の進歩により、診断・治療が進んで健康に生まれてくるお子さまが増えました。その一方で、長期的、あるいは重度の障害を持ちながら在宅で生活するお子さまも増加傾向にあります。
訪問看護では、そんな障害を持つお子さまへの医療ケアや服薬管理、健康状態の管理はもちろん、入浴介助などの日常的ケアもお手伝いしています。
入浴の重要性
重度の障害を持つお子さまの多くが、日常生活の大半を寝たきりの状態で過ごしています。
寝たきりの場合、緊張による発汗、よだれ、排泄物などによって体が汚れやすくなります。
汚れが残っていると皮膚トラブルや感染症などを引き起こす可能性もあるので、清潔ケアは重要な支援のひとつです。
特に入浴は清潔を保つだけでなく、新陳代謝や血流の促進効果があり、暖かいお湯に浸かることはリラックス効果もあります。
また、清潔ケアを行うことで全身状態を把握することができ、異常の早期発見にも繋がります。
人工呼吸器をつけているお子さまの入浴
在宅で人工呼吸器を使用しているお子さまも多くいます。
人工呼吸器を使用しているお子さまの入浴は、機器の移動や浴室という滑りやすい環境のため、チューブの抜管や転倒など重大な事故に繋がることもあります。そんな緊張感が絶えない中での入浴を「大変……」と感じている保護者様も多くおられます。
しかし同時に、入浴は大切な「生活習慣」「コミュニケーション」「学習」の時間であるとも保護者様は考えておられます。
訪問看護では、そんな大切な入浴の時間を安心・安全に過ごせるようにお手伝いしています。
【実例】Aちゃん(5歳)の入浴
お母さんと看護師の2名体制で入浴しています。
看護師がAちゃんを抱っこしてベッドから浴室へ移動。お母さんが蘇生バッグでバギングしながら、看護師が全身状態を確認しつつ体や頭を洗います。
きれいに石鹸を洗い流したら、お母さんがAちゃんを抱っこして一緒にお湯に浸かってリラックス。
その間、看護師が蘇生バッグでバギングします。
Aちゃんはお母さんとまったりできる入浴の時間が大好きです。
お母さんとお話をしながらゆったり温まって、Aちゃんが「もう上がりたいな」と合図したら(瞬きと視線で合図してくれます)、滑らないように気を付けながら看護師がAちゃんを抱っこして体を拭き、ベッドへ移動します。
Aちゃんの場合は蘇生バッグを使用しての入浴ですが、人工呼吸器をつけた状態で入浴したり自発呼吸で対応したりと、入浴方法はお子さまによって様々です。
訪問看護では、各おうちの方法・お子さまに合った入浴方法で支援を行っています。
入浴後の皮膚トラブルを避けるためのスキンケア
入浴で体を綺麗にしてリラックスしたあとは、スキンローションなどで肌の保湿・保護をします。
乾燥は皮膚トラブルを引き起こす原因のひとつです。特に手足の指の間はトラブルが多い箇所なので、特に気を付けてケアします。
また、筋緊張が高いお子さまには併せてマッサージを行い、よりリラックスしてもらえるように工夫しています。
まとめ
ご家族にとってお子さまの入浴は「大変……」と思いつつも、大切でかけがえのない時間になっていると、訪問していて感じます。
現状、制度の関係で毎日入浴のお手伝いに伺うことは難しいですが、だからこそ1回1回の入浴が安心・安全に楽しく過ごせる時間になるよう、わたしたち訪問看護は支援し続けていきます。