介護食のとろみのつけ過ぎは誤嚥の原因に!?とろみ剤の正しい使い方

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嚥下障害(飲み込みがしにくい)を疑われる方の食事や水分摂取に「とろみ剤」を勧められることがよくあります。
とろみ剤はドラックストアや通販などで簡単に手に入るため安易に使われがちですが、実は使用には十分な注意が必要です。
なぜなら、とろみのつけ過ぎはかえって誤嚥を招く恐れがあるからです。
 
2020年の厚生労働省の調査で誤嚥性肺炎は日本人の死因の第7位にランクインしています。
「とろみ剤」を正しく使って、誤嚥を予防していきましょう。

 

誤嚥性肺炎はなぜ起こる?

とろみは嚥下障害の中でも、「嚥下反射に問題がある方」に効果があります。

 

嚥下反射とは?誤嚥のメカニズム​​​​​​

食べ物が喉に送り込まれると「嚥下反射」が起きます。
この嚥下反射により、気管が閉じて食道が開きます。
しかし、嚥下反射に問題があると、食べ物が喉へ流れるスピードと気管を塞ぐタイミングが合わず、気管に食べ物が入ってしまいます。
これが誤嚥のメカニズムです。
さらに、食物や唾液と一緒に細菌が気管の中に入り込むと肺の中で細菌が増えてしまい、誤嚥性肺炎のリスクが高まります。

 

とろみ剤の正しい使い方とは?

とろみにより食べ物や飲み物の粘度が増し、喉に送られる速さがゆっくりになると、嚥下反射に遅れがある人でも誤嚥しにくくなります。
つまり、とろみをつける目的は食べ物が喉へ入るスピードを遅らせることなのです。

また、とろみ剤によって飲み物や食べ物がまとまるので、飲み込みやすくなる効果もあります。
このように、嚥下障害のある方に効果がある「とろみ」ですが、適当にとろみ剤をまぜてしまうとかえって危険が増すこともあります。

 

とろみのつけ過ぎによるリスクとは? 

とろみをつけ過ぎると、液体の粘度が増して喉に貼りつきやすくなってしまいます。
この喉に食塊が貼りついて残ることを「咽頭残留」といい、誤嚥の原因になります。
そのため、とろみのつけ方には十分注意が必要です。

 

とろみの強さを確認しよう

とろみの程度は日本摂食嚥下リハビリテーション学会の嚥下分類で大きく3段階に分けられます。
  • 薄いとろみ・・・スプーンを傾けるとスッと流れ落ちる
  • 中間のとろみ・・スプーンを傾けるととろとろと流れる
  • 濃いとろみ・・・スプーンを傾けると形状がある程度保たれ、 流れにくい

 

まずは専門家に相談を!

とろみの強さは一人ひとりの嚥下の状態に合わせることが重要です。
嚥下の状態を診る検査は病院で受けることができます。
その際、医師や言語聴覚士や管理栄養士などの専門家にとろみのつけ方を相談するとよいでしょう。

とろみ剤を混ぜるときの方のコツ

とろみの適切な程度が分かったら、次はとろみのつけ方のコツです。
とろみ剤を混ぜるには一般的にスプーンを使いますが、なかなか混ざらずダマになってしまうことがあります。
ダマができてしまうと均一にとろみがつかないため、誤嚥の原因になります。
ダマになるのを防ぐには調理用具の「ミニ泡だて器」を使用することをおすすめします。
スプーンより手早くきれいに混ざりますよ。

また、スプーンでまぜる場合にもコツがあります。
グルグル円状にかき混ぜると容器の中心にとろみ剤が集まり、ダマができやすくなります。
とろみ剤を混ぜるときは円状にかき混ぜた後にスプーンを前後に動かして混ぜるとよく混ざります。
 
さらに、入れる順番にもコツがあります。
飲み物を入れた後にとろみ剤を入れるのではなく、先に容器にとろみ剤を入れて液体を注ぐほうが混ざりやすくなります。
これは後から入れた方が液体に対流が起こり、まんべんなく混ざるからです。

 

食べ物や飲み物によってとろみのつき方が違う

とろみは対象によってとろみのつき方に違いがあります。
これは食べ物や飲み物の種類によってとろみ剤が水分を吸収する時間が違うからです。
例えば、水やお茶などの混ざりものの少ないものは、とろみ剤の吸収が早いため入れた直後からとろみがつきます。

しかし、スープやみそ汁などの混ざりものが多いものは水分の吸収が遅いため、とろみがつくのに時間がかかります。
スープやみそ汁は混ぜた直後はゆるくても、時間がたつと硬くなりすぎてしまう場合があります。
そのため、混ぜた直後ではなく、10分ほどたってから再度硬さを確認するとよいでしょう。

 

  まとめ

とろみをつける目的は、
  • 食べ物や飲み物が喉を流れるスピードをゆっくりにして誤嚥を防ぐ。
  • 食べ物や飲み物をまとめて飲み込みやすくする。
ことです。

とろみの粘度が高くなりすぎると咽頭残留を起こしやすくなってしまうので、注意しましょう。
とろみをつけるときのコツは、
  • とろみ剤はミニ泡だて器で混ぜると混ざりやすい。
  • とろみ剤は円状に混ぜるだけでなく、スプーンを前後に動かしてかき混ぜると混ざりやすい。
  • とろみ剤を先に容器に入れ、後から液体を入れた方が混ざりやすい。 
  • 食べ物や飲み物の種類によりとろみが安定する時間が違うので、少し時間をおいて硬さを確認する
いかがでしたか?
簡単に手に入る「とろみ剤」ですが、その特徴を知らずに使ってしまうとかえって危険な場合もあります。
まずは嚥下面に関して不安を感じたら、専門家に相談しましょう。
その上で「とろみ剤」についての理解を深め、正しく使っていくことが大切です。

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