【療法士向け】最低限知っておきたいリスク管理!フィジカルアセスメント

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「フィジカルアセスメント」とは、「フィジカル=身体的な」「アセスメント=情報を意図的に収集して判断する」という意味で、身体状態の異変にいち早く気付き、対処するための予備知識・判断技術のことです。

医療従事者のリスク管理として、最低限知っておくべきことをまとめました。

 

リスク管理として必要な技術「フィジカルアセスメント」

臨床の現場で起きるリスクには、主に以下の3つの因子があるとされています。
  • 外部性障害:転倒・打撲、怪我、外傷などの運動器障害、異物による気道閉塞、付属医療機器の脱落など
  • 内部性障害: 運動療法による内臓障害、慢性病の悪化、突発症の発作など
  • 増悪因子: 身体的・精神的ストレスによる障害、栄養学的異常、薬物の服用・非服用など

この中で運動療法を行うリハビリにおいて、外部性障害によるリスク管理は比較的注意喚起が促されやすく、予防がされやすい部類にあります。
しかし、内部性障害、増悪因子に関しての観察能力は、少し観察して注意するだけでは防ぐことが難しく、身体状態の異変にどれだけ早く気付き、予防することができるか、という視点が重要です。
 
そこで、
  • 臨床の現場で急変しやすい疾患の危険因子をあらかじめ押さえておくこと
  • 発症の徴候を確認(フィジカルアセスメント)すること
が重要になってきます。

 

疾患


フィジカルアセスメントの対象となる疾患は、主に以下のものがあります。
  • 肺塞栓
  • 脳卒中
  • 虚血性心疾患
  • 呼吸不全
  • 不整脈
  • 消化管出血
  • 肺炎
  • 肺うっ血
これらの疾患が発症する徴候や因子について、日ごろから常に状態を観察しておく必要があります。

 

動脈硬化の危険因子

さらに動脈硬化があると、上記の重篤な疾患を発症しやすくなります。
つまり、動脈硬化の危険因子を抑えておくことも大切です。
  • 高血圧
  • 糖尿病
  • 高脂血症
  • 腎不全
  • 肥満
  • 喫煙
  • 心筋梗塞の家系
  • うつ病
これらの因子が3つ以上ある場合、運動療法実施中に特にこまめに体調を確認しながら行う必要があります。

 

よくある軽症で頻度の多い疾患

  • 感染(尿路感染症)
  • 疼痛・外傷・転倒
  • 脱水・低Na
  • 薬物副作用
  • 高血圧
  • 貧血・栄養失調
これらの疾患はすぐには対処が必要でない場合も多く見過ごされがちですが、のちに重篤な疾患・リスクに変化する可能性があるため、注意深く観察しておく必要があります。
特に薬物副作用など、「昨日、薬を飲み忘れたから今日は2日分一気に飲んだ」など、臨床の現場では意外とよく聞くケースです。
注意深くお話を聞いておきましょう。

 

最低限見落としてはいけないサイン6つ

  • ふらつき
  • 嘔吐
  • 息切れ
  • 胸痛
  • チアノーゼ
  • 頭痛
これらの症状が出現する場合、程度にもよりますが何かしらの重篤な疾患を発症する、又はしている可能性があるため、注意深く観察します。

 

一見軽症に見えるが、実は要注意な症状

  • だるい
  • 眠れない
  • むくむ
  • 食欲がない
  • 痛む
  • ぼっーとしている
一見どこにでもある症状ですが、実は重篤な疾患を示唆する症状である場合もあるため油断は禁物です。 
例えば、心不全がある場合「眠れない」と言う症状を訴える方も多く、これは肺うっ血が起こるために引き起こされる症状かもしれません。

これらの症状が聞かれる場合も、上述の因子を考慮してリスクを判断しておく必要があります。

 

高齢者の疾患の無症候化にも注意

特に高齢者の場合、重篤な疾患の症状が出現しにくくなっている場合があります。
これは、無症候化」と呼ばれる状態で、以下の原因によるものです。
  • 症状の慢性化
  • 自律神経機能の低下による重症感の低下
  • 疾患の重複
  • 閾値の上昇があるが、慣れてしまっている
低血糖症状もそうですが、普通は頻脈になり、冷や汗が出たりと徐々に多彩な症状が出現し、血糖値40前後で意識混濁に陥るとされています。
しかし高齢者の場合、何の症状もなく、いきなり意識の低下が起きる場合も考えられます。

よくある症状だからと言って見過ごしてしまうと重篤な疾患に繋がる可能性があります。
兆候を見逃さないようにしたいものです。

 

重篤な疾患を疑うきっかけは?

リハビリでの運動中や運動前後に以下の症状がある場合、特に注意が必要です。
  • ふらつきと急な脈拍の触知困難
  • 動脈硬化因子のある人に、嘔吐、血圧低下、頻脈、不整脈が出現
  • 下肢が赤く腫れている
  • SPO2(動脈血酸素飽和度)が急に下がる
  • ふらつきと黒か赤色の嘔吐か下痢
  • 爪の蒼白

 

フィジカルアセスメントの項目

簡単な診断項目・指標として、
  • 顔色
  • 頸動脈の触知
  • SPO2測定
  • 浮腫
  • 心雑音・呼吸音
  • ツルゴール
  • 脈拍
があります。
顔色の判断では色見を観察します。

血液の色には赤血球の赤色と血小板の黄色が混じっています。よって、酸素が多いほど赤みが増し、血液が薄い程黄色くなります。
チアノーゼではご存じの通り、顔色は赤紫色になり、酸素が足りない状態(低酸素)です。

貧血状態は一般的に蒼白になると思われがちですが、正確には赤血球が減少するため、血漿成分の色が強くなり、顔色は黄色くなることもままあります(いわゆる土気色)

 

 脱水のフィジカルアセスメント

意外と多い急変を招きやすい症状が「脱水」です。
特に高齢者は、水分を摂取してトイレに頻繁に行くことを面倒に思う方が多いため、水分摂取を意図的に制限している場合があります。
夏以外でも多くの人が軽度の脱水傾向があるといわれているため、注意しておきます。
 
以下の「ブランチテスト」と「ツルゴール」の低下で簡易に脱水状態の評価が行えます。

 

ブランチテスト

相手の第1指(母指)か爪を指でつまんで圧迫し、白色からどの位の時間で色が戻るかを測定します。
10歳加齢すると3.3%延長されるといわれ、高齢者は4秒がおよその目安です。

この時間以上経過しても皮膚色が白色から変化が無ければ「脱水」を疑いましょう。

 

ツルゴール低下

ツルゴールとは、「皮膚の張り」のことです。
手の甲を軽くつまみ、つまんだ皮膚の戻る時間を見ます。2秒で戻らない場合は脱水を疑います。

 

まとめ

臨床現場でのリスク管理は、
  • 対象者の症状を常日頃から観察しておく
  • リスクが高い運動を避ける
  • 異変にいち早く気付く
  • 適宜運動量の調節や休憩を挟み、安全を確保する
ことが必要です。
また、実は急変してからでは遅く、それまでの日常生活の観察や体調の変化に敏感にアンテナを張っておく必要があります。
上述の内容以外にも、聴診などが主にそうですが「フィジカルアセスメント」は大変奥深く、今回の記事でご紹介した内容はごくごく一部です。

もし興味があれば、関連する書籍もたくさん出版されていますので、それらを参照してみるのも面白いかもしれません。

 

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