作業療法士は「回復期リハビリテーション病院」や「訪問(在宅分野)でのリハビリテーション」など、さまざまな分野で活躍しています。
その中でも、認知症を呈した患者さまの支援に携わることも多くあるのではないでしょうか。
認知症の症状は人によって多種多様です。その人その人で違った症状を見せる認知症の方を支援することは簡単ではありませんよね。
今回は、そんな認知症についての基本的な情報から、作業療法士が在宅においてどのような評価を進めていけば良いかについてご紹介します。
ぜひご一読ください。
認知症の種類
認知症は脳の病気や障害など、さまざまな原因によって認知機能が低下し、日常生活全般に支障が出てくる状態をいいます。なお、認知症にはいくつかの種類があります。
1.アルツハイマー型認知症
アルツハイマー型認知症は、認知症の中で最も多く、脳神経が変性して脳の一部が萎縮していく過程で起きる認知症です。症状は「もの忘れ」から発症することが多く、ゆっくりと進行していくのが特徴です。
2.血管性認知症
脳血管障害による血管性認知症では、障害された脳の部位によって症状が異なるため、一部の認知機能は保たれている「まだら認知症」が特徴です。症状はゆっくり進行することもあれば、階段状に急速に進む場合もあります。
また、血管性認知症にアルツハイマー型認知症が合併している患者さまも多くみられます。
3.レビー小体型認知症
レビー小体型認知症は、現実には見えないものが見える幻視や、手足が震えたり歩幅が小刻みになって転びやすくなる症状(パーキンソン症状)があらわれるのが特徴です。ポイントとなるのは、認知機能が低下したことで日常生活にどのような支障が出ているかを分析することです。
認知症の主な症状
認知症の症状には、機能低下からくる「中核症状」と呼ばれるものと、「中核症」状が原因で行動や心理面に症状が出る「BTSD」と呼ばれる症状があります。
中核症状
中核症状は以下のような症状です。- 物忘れ
- 数分前、数時間前の出来事をすぐ忘れる
- 同じことを何度も言う・聞く
- しまい忘れや置き忘れが増えて、いつも探し物をしている
- 約束を忘れる
- 昔から知っている物や人の名前が出てこない
- 時間・場所がわからなくなる
- 日付や曜日がわからなくなる
- 慣れた道で迷うことがある
- 出来事の前後関係がわからなくなる
- 理解力・判断力が低下する
- 手続きや貯金の出し入れができなくなる
- 状況や説明が理解できなくなる、テレビ番組の内容が理解できなくなる
- 運転などのミスが多くなる
- 仕事や家事・趣味、身の回りのことができなくなる
- 仕事や家事・趣味の段取りが悪くなる、時間がかかるようになる
- 調理の味付けを間違える、掃除や洗濯がきちんとできなくなる
- 身だしなみを構わなくなる、季節に合った服装を選ぶことができなくなる
- 食べこぼしが増える
- 洗面や入浴の仕方がわからなくなる
- 失禁が増える
行動・心理症状(BPSD)
認知機能低下による行動・心理症状は以下のようになっています。- 不安、一人になるとを怖がったり寂しがったりする
- 憂うつでふさぎこむ、何をするのも億劫がる、趣味や好きなテレビ番組に興味を示さなくなる
- 怒りっぽくなる、イライラ、些細なことで腹を立てる
- 誰もいないのに、誰かがいると主張する(幻視)
- 自分のものを誰かに盗まれたと疑う(もの盗られ妄想)
- 目的を持って外出しても途中で忘れてしまい帰れなくなってしまう
訪問(在宅分野)でのリハビリにおける作業療法士の役割
作業療法士は、「"活動"と"参加"に繋がっていく」という視点を持ちながら介入していく必要があります。そのためには、本人の望む生活・やりたいこと、生活上の困りごとをベースに5つの視点でアセスメント(評価)を行います。
1.本人の生活習慣
2.本人の能力・機能
3.本人のニーズ把握と他職種との情報共有
4.社会参加状況
5.周囲の物理的環境・人的環境
そのうえで、生活の困りごとについて「工程分析・作業分析」し、“なぜ困っているのか、どうしたら出来るようになるか” を考えていくことが大切です。
訪問(在宅分野)でのリハビリで作業療法士が行う評価項目
訪問(在宅分野)でのリハビリで、作業療法士が行う評価項目として代表的なものは以下になります。
基本項目
- 生活行為全般:MTDLP
- 生活状況:1 日の流れ、IADL/BADL、生活習慣、睡眠、活動性、外出 、対人・社会交流、コミュニケーション
- ナラティフブ:今の生活の困りごと、今後の生活のニーズ、興味関心、余暇活動、経済状況
- 人的環境面:家族背景と介護力、本人と家族の関係性、介護負担、近隣住民や地域性
- 物理的環境面:住環境、地域資源、公共交通機関
- BPSD:心理症状、行動症状
- 機能面:認知機能、せん妄、身体機能
- 心理面:アパシー、うつ、意欲
- 医療的介入の必要性:栄養、服薬状況、身体合併症管理
- リスク管理:誤嚥、転倒・転落、廃用
検査・測定項目
- 生活状況:ADL / IADL (DASC-21、FIM、Barthel Index) (Lowton の IADL 尺度)、生活習慣、睡眠、活動性
- ヒアリング:生活の困りごと、生活のニーズ、興味関心チェックシート
- 人的環境:家族背景、介護負担感、介護肯定感(介護肯定感尺度)
- 物理的環境:住環境(生活動線、手すりの有無)、福祉用具の使用状況、一般家具の使用状況
- 機能面:認知機能(HDS-R、MMSE、CDT、TMT-A/B)、身体機能(ROM、MMT、感覚、疼痛、バランス能力、移動能力)
- 他職種との連携
- 今後のニーズに向けた目標と結果
- 繋ぐ先の環境評価と情報収集
まとめ
この記事では、認知症の特徴から、作業療法士が訪問(在宅分野)でのリハビリでどのような役割を担っているか、どのようなことを評価したら良いのかについて紹介しました。認知症は認知機能が低下したことで、日常生活に支障が出る状態のことを指します。
そのため、単に認知機能のみを評価するのではなく、どのような物的環境、社会環境の中にいるのか、介護者の負担、本人のやりたいことや人生を支えるといった包括的な視点が必要になります。
訪問(在宅分野)でのリハビリに興味のあるあなた、ぜひ参考にしてみてください。
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