今回は呼吸器の病気である、COPD(慢性閉塞性肺疾患)とそのリハビリ方法についてご紹介します。
COPD(慢性閉塞性肺疾患)ってどんな病気?
COPDとは、慢性閉塞性肺疾患(Chronic Obstructive Pulmonary Disease)の略です。(以下、COPDと記載)
慢性気管支炎と肺気腫の2つをまとめて「COPD」と呼びます。
ほとんどが長い期間の喫煙が原因で、中年以降に発症することが多い病気です。
COPD(慢性閉塞性肺疾患)の主な症状
COPDの症状で代表的なものが以下になります。
①労作時の息切れ
坂道や階段を昇る時などの労作時に、いつもより息切れするのが早くなったり、普段以上に息切れがしたりします。
症状が進行してくると安静時でも息切れがみられることがあります。
また、息を吐くことが苦手なため、二酸化炭素が体内に溜まりやすくなります。
②長期的に咳が出る
咳は健康な方でも出るものです。
例えば、風邪症状でも出るため、初めは風邪かなと思うことがあるかもしれません。
しかし、COPDの場合は数ヶ月〜数年に渡って咳が続きます。
タバコを長い間吸っている方に多いので、喫煙による咳と勘違いされることも多くあります。
③喀痰(かくたん)
喀痰(かくたん)とは、痰や痰が出ることをいいます。
高齢になると自力で痰が出しにくくなります。
そうすると痰が詰まりやすくなり、呼吸困難になることもあるので注意が必要です。
その時はポジショニングなど行ない、排痰を促します。
COPDのリハビリテーション
COPDは呼吸器の疾患なので、呼吸器官に対するリハビリを行っていきます。
これを呼吸リハビリテーションと呼びます。
呼吸リハビリテーションは、病気や外傷によって呼吸器に障害が生じた患者さんに対して、可能な限り機能を回復、あるいは維持することによって症状を改善し、患者さんが自立した日常生活や社会生活が送れるように継続的に支援する医療です。
呼吸リハビリテーションの効果
呼吸リハビリテーションを行うことで下記の効果があります。
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呼吸方法を覚え、楽に呼吸ができるようになる。
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胸郭(胸周りの骨や筋肉、靭帯などの組織)や呼吸に必要な筋肉の柔軟性が向上する。
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痰を自力で出しやすくなり、肺炎になるリスクを下げる。
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苦しい時でも呼吸がコントロールできる。
呼吸リハビリテーション│呼吸方法
呼吸リハビリテーションでは、呼吸器の状態を整えていきますが、同時に呼吸の仕方をより効率的に行うことも練習していきます。
では、どんな方法を行うと呼吸が楽になるのでしょうか。
①口すぼめ呼吸
COPDのように、吐くことが苦手な病態は口すぼめ呼吸が有効とされています。
口すぼめ呼吸とは、「息を吐く」ことを意識した呼吸法になります。
吐くことを意識することで次の呼吸でたくさんの酸素を効率よく吸うことができます。
<方法>
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口を閉じて、鼻から息を吸います。
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口をすぼめて、ゆっくりと息を吐きます。
★ポイント
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息を吐くときは、ロウソクの火が揺れるくらいの強さで行います。
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息を吐くときは、ゆっくり長く吐くようにしましょう。
②腹式呼吸
<方法>
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鼻から息を吸って、お腹を膨らませます。
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お腹の力を抜いて、口をすぼめてゆっくりと息を吐く。
★ポイント
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両膝を立て、お腹に手を当てると分かりやすいです。
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無理な力がお腹に入らないように、あくまで吸う息によって胸とお腹が膨らむように意識します。
呼吸リハビリテーション│運動療法
呼吸リハビリを行うことで、運動能力の改善や息切れが軽くなるなどの改善がみられます。
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運動の頻度
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運動の強度
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運動の時間
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運動の種類
上記4点を検討しながら行なっていきます。
エルゴメーターを用いて体力トレーニングを行なったり、マシンを使用して筋力訓練を行なったりします。
リハビリとして療法士などが関わることができる時間には限りがあるので、自主トレーニングなども活用して運動する習慣を身につけていくことも重要です。
①仰臥位(あおむけ)での自主トレーニング
以下のような自分でできるトレーニングを行い、呼吸が楽にできる体に整えていきます。
<上半身>
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仰臥位(あおむけ)になり、両腕を天井に向けて真っすぐに伸ばします。
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両腕を頭の方へ挙げて「バンザイ」の状態になります(腰が反らないように注意)
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「バンザイ」の状態で止めて呼吸を3回・・・鼻から5秒吸って、口から5秒でハーっと出します。吐ききったら5秒間静止。この呼吸を3回繰り返します(姿勢が崩れないように注意)
<下半身>
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両ひざを伸ばしたまま、仰臥位(あおむけ)になります。
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息を吐きながら、片足を上げます。
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片足を上げたまま、呼吸を1回します。
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息を吐きながら、上げていた片足を下ろします。
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これを3回繰り返します。
※少しきついくらいを目安に行なってください。
日常生活で気を付けること
COPDの方が日常生活で気をつけるべきポイントは以下になります。
①上肢を上げる動作
腕を上げると、胸郭の動きが制限され呼吸がしにくくなることがあります。
例)洗濯物干し、洗髪、高いところの物を取る動作 など
②反復動作
反復する動作は、リズムがつきやすくなるため速くなってしまいます。そのため息苦しくなります。意識してゆっくりと行うことで息苦しさが緩和されます。
例)掃除機をかける・歯磨き・拭き掃除 など
③お腹を圧迫する動作
横隔膜の動きが制限され、呼吸しにくくなります。
例)草むしり、靴下やズボンをはく、下にあるものを取る など
④呼吸を止める動作
呼吸を止めてしまうため、呼吸のリズムが乱れ、息苦しさが起こりやすくなります。
例)顔を洗う、排便、重いものを持ち上げる など
日常生活では主に上記のことに気を付けてもらえると良いと思います。
動作時は口すぼめ呼吸を心がけるように促しながら、動作確認を行うことが推奨されています。
まとめ
COPDと呼吸リハビリについてご紹介しました。
COPDの方が楽に生活をするには、運動と効率の良い呼吸方法を行うことが必要です。
COPDの方は何気ない生活動作が息苦しくなってしまいます。
運動を行い、息切れがしにくい体を作り、動作を確認して少しでも楽に生活ができるようにしていきましょう。