”在宅医療”という言葉や”在宅介護”という言葉がよく聞かれるようになりました。
政府としても、ケアが必要な方を地域で診ていくという流れが主流となってきています。
そんな中で、在宅介護の問題点として挙げられているのが、介護している家族がうつ状態になってしまうこと、つまり「介護うつ」です。
今回は、「介護うつ」について、解決策をお伝えします。
「介護うつ」とは?
「介護うつ」とは、介護による悩みやストレスからうつ状態になることをいいます。
近年、在宅介護や在宅医療という言葉が聞かれるようになってきています。
2025年には団塊の世代が後期高齢者となり、高齢者が急激に増加します。社会保障費の急増もあり、少しずつ在宅での介護へ移行してきています。
そんな中で、在宅介護の問題点として、介護している人がうつ状態になることが挙げられています。
長い期間の介護により、疲労やストレス、尽くしているのに報われないことからの虚無感など、介護に関わる様々な要因で発症します。
2005年に在宅介護者を対象に行った『介護者の健康実態に関するアンケート』によれば、回答した8500人中 約4人に1人がうつ状態で、65歳以上の約3割が「死にたいと思うことがある」と回答しました。
「介護うつ」は、本人が知らないうちに発症しているケースもあるため、注意が必要です。
こんな人はうつになりやすい
ここでは、うつ病になりやすい人の特徴をいくつか挙げます。
- 夜中に目が覚めて、寝つきが悪い
- 趣味や好きなことに興味を示さない
- 面倒と言うことや思うことが多くなった
- マイナス思考の発言が多い
- 友人など人に会うことが嫌になる
いかがでしょうか?自分やあなたの周りの人はどうでしょうか?
上記のような状態が続くようであれば、注意が必要です。
また、厚生労働省が配布している「簡易抑うつ症状尺度」というチェック用紙があります。
参考にしてみてください。
厚生労働省「心の健康」:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/kokoro/index.html
介護ストレスの要因とは?
「介護うつ」になる要因として疲労やストレスがあります。
では、ストレスになる要因とは何でしょうか?
主に3つの要因が考えられます。
身体的ストレス・・・長時間の介護や夜間でのオムツ交換などにより睡眠時間が確保できず、睡眠不足になりやすいです。また、起床や寝返り、移乗などもあり、身体的に負担が多いです。
精神的ストレス・・・要介護者の予想もしていない行動や発言の対応や、以前とは違うギャップ、自分の時間がとれなかったりと精神的な負担が大きいです。
経済的ストレス・・・介護用品の購入や介護のために、仕事の時間を短時間にしたり、辞めなくてはいけない場合もあるでしょう。収入が減少してしまい、経済的にも負担は多くなります。
介護ストレスの解決策
介護ストレスを解消するために、おすすめされていることをご紹介します。
①レスパイトを利用する
レスパイトとは「小休止」の意味があります。
介護をしている人を一時的に介護から解放して、休みをとってもらうようにする支援をレスパイトケアと言います。
また、ショートスティやデイサービス、デイケアを利用するのも良い方法です。
少しでも介護から離れる時間を作ることが大切です。
②運動をする
ジョギングやスイミング、スポーツジムなど体を動かすことでストレスを発散することができます。
1日に30~60分の運動を行なっている人は、気分が優れないと感じる日が少なかいという報告もあります。
③趣味
運動と似ていますが、趣味は体を動かすものだけではありません。
美術が趣味であれば美術鑑賞に行く。
音楽が好きであれば音楽を聴く。
他にもハンドメイド作品を作ったりガーデニングをしたりするなど、何か没頭できるものがあるとストレスを発散しやすくなります。
④コミュニテイに属する
現代では、インターネットが欠かせないものとなっています。
インターネットで、介護をしている人のグループやコミュニティもあります。
意外とみんな同じようなことで悩んでいるものです。
そこで話を聞いたり、話しをしたりすることも気分転換になります。
悩みを打ち明け、共感してもらえる場所があるだけで心は晴れやすくなります。
➄サービスを積極的に活用する
要介護認定を受けていれば、訪問ヘルパーなどの介護保険サービスを利用することができます。
他にも、訪問看護や訪問介護、福祉用具、入浴、排せつ、食事介助などもあり、洗濯や家事のサービスもあります。
サービスを積極的に利用して、自分の時間を確保するようにします。
介護うつの対策
介護うつにならないためにできることをご紹介します。
①重症になる前に受診を
うつというのは、なかなか自分で気づきにくいものです。
気づいたときには、重症になっているというケースもあります。
簡易なチェックを行い、少しでも不安があれば医療機関に相談してみましょう。
②入所するタイミング
社会的に少しずつ在宅介護を推奨する方向に移行してきています。
しかし、介護者がうつになったということは、もしかしたら老人ホームなどの施設へ入所を考える時期にきているのかもしれません。
入所となると気が引ける方もいるかと思いますが、体調を崩してしまうと介護者も被介護者も共倒れになってしまいます。
1つの「タイミング」と考えて、ケアマネージャーなどに相談してみましょう。
介護うつ予防で楽に介護する
介護うつを解消する方法についてお伝えしましたが、そもそも予防することが最も重要です。そのためには以下のことに気を付ける必要があります。
①1人で介護を負わない
どうしても、
「私がやらないと」
「自分の家庭のことだから…」
と思い、一人で抱え込み過ぎてしまうことがよくあります。
ケアマネジャーや友人など、まずは気軽に相談してみることが大切です。
良く言われることですが、「自立」とは決して「自らひとりで立つこと」ではありません。
長く自立して介護している人は、必ず相談できる、頼れるところをたくさん確保しています。
行政やサービス事業所など、たくさんの頼れるところを確保しておくことこそが、介護を長く続くけて「自立する」ためのコツです。
② サービスを積極的に活用する
解決策の方でも挙げていましたが、訪問介護や訪問看護などのサービスを使い、自分の負担を減らすことも大切です。
③自宅にこだわらなくても良い
「自宅で介護をしていかないと…」と思う必要はありません。
現在では、環境によっては自宅よりも快適に過ごせる施設がたくさんあります。
家族が遠方にいたり、近くにいるけどなかなか頻回に訪問できない場合は、入所施設を利用するもいいと思います。
④楽な介護のやり方を考える
介護が初めての方は、分からないことばかりだと思います。
そんな時は、訪問看護や訪問リハビリなどの訪問ヘルパー・看護師・療法士に介助のやり方を教えてもらうのも1つです。
少しの違いで楽に介護ができることがあります。
また、すでに介護を行なっている人(近所の人など)に相談してみるのもいいでしょう。
まとめ
介護うつは、介護している方であれば誰しもが発症する可能性があります。
少し前は介護に関して「家庭のことは家庭で」という価値観がありましたが、今は「家庭のことも地域で」という価値観が浸透しています。
それだけ介護を自宅で行うのは大変であるということが認知されるようになってきているんですね。
介護は介護している人が無理をすると、それが介護の質に影響し、ひいては被介護者にも大きく影響します。
自分だけのためではなく、お互いのために、自身が楽に余裕を持って介護できる環境作りを少しづつ進めていきましょう。
もちろん、私たちサービス事業所もぜひそのお手伝いをさせてください。
引用文献)
1)保坂隆.厚生労働省老人保健事業推進費等補助金(老人保健健康増進等事業分) 介護者のうつ予防のための支援の在り方に関する研究.2006.