慢性痛とリハビリテーション

慢性痛とは 急性痛とは 慢性痛の種類 トータルペインとは 侵害受容性疼痛とは 長期的な痛み 治ったのに痛い理由 慢性痛の予防法 慢性痛のリハビリテーション 痛みのメカニズム

あなたは「慢性痛」という言葉を聞いたことがありますか?
慢性的な痛みに苦しんでいる人は、全国で約2000万人いるという報告もあります。

今回は、そんな「慢性痛」についてお伝えします。

 

そもそも痛みってなに?

「慢性痛」の前に、そもそも「痛み」とはなんなのでしょうか。
まずは、「痛み」とは何か? について説明します。

「痛み」とは、病気やケガなどで損傷したことを体へ知らせる機能のことです。
末梢神経にあるセンサー(侵害性受容器)が刺激を感知して脊髄に伝わります。
それが脳に伝わったことで、私たちは「痛い」と感じるのです。
この機能があることで、体は「組織を治そう!」と動きます。

これを「侵害性受容性疼痛」といいます。

他にも心因性や神経性があり、基本的に「痛み」は原因が取り除かれると、その90%が数日~6週間以内に治まります。
しかし、稀に3~6カ月以上続く痛みがあり、その痛みを「慢性痛」といいます。

 

痛みの種類

痛みに様々な種類があります。

1つは「急性痛」です。
怪我や火傷などにより起こります。
すぐに治まる軽度のものから、数カ月続く重度なものまであります。
しかし、大半は6カ月くらいで治まることが多いです。

2つ目が「慢性痛」です。
6カ月以上痛みが続く場合です。

他にも、

・神経障害性疼痛:神経が障害されたり、神経の周りに炎症が起きて感じる痛み。座骨神経痛など。

・心因性疼痛:職場や家庭などのストレスによって生じる痛み。首や肩・腰に痛みが出現することがある。

・侵害受容性疼痛:刺激や炎症を末梢神経が感知して生じる痛み。変形性膝関節症やぎっくり腰などが挙げられる。

などがあります。

手術や傷による痛みが一般的ですが、痛みとはとても幅が広く、緩和ケアの中では「トータルペイン」という言葉をよく聞きます。
ここでは、簡単にトータルペインの4つの側面を書いていきます。

 

トータルペイン(全人的痛み)の考え方

 痛みには4つの側面があります。

・身体的苦痛:痛み・息苦しさ・動けないこと・日常生活の支障など

・心理的苦痛:不安・恐れ・怒り・孤独感など

・社会的苦痛:仕事上の問題・経済的な問題・家庭内の問題など

・スピリチュアル:人生の意味・苦しみの意味・価値観の変化など

先程の痛みの観点からは少し違った観点からの痛みの解釈ですが、人間は動物と違い、傷などの物理的外傷とは異なる痛みがあることも示唆されているところが重要です。

慢性痛の要因

上述したように、痛みの種類には「急性痛」と「慢性痛」があります。
「急性痛」は痛みの原因がなくなれば痛みは徐々に消失していきます。
「慢性痛」は痛みの原因がなくなっても消えない痛みです。

 

痛みのメカニズムと慢性痛

1. 筋や骨などから痛みの刺激が送られる。
2. 脊髄を通る。
3. 脳が痛みの場所や度合いを認知する。
4. 特定の場所が痛む。

おおまかにこのような流れで痛みが出現します。

しかし、痛みが長く続くと脳が自動的に痛みの刺激を送ってしまう回路ができ、痛みの原因がなくなっても痛みが出現してしまいます。
これが「慢性痛」のメカニズムです。

また「慢性痛」が続くと脳が過敏になってしまい、他の部位にも過剰に反応するようになってしまいます。
痛みが続くことで、筋肉も痛みがある部位を守ろうとして硬く短くなり、他の部位の痛みやコリを誘発することもよくあります。

 

リハビリテーション

慢性痛に対するリハビリの方法として基本的なものをご紹介します。

▼運動療法

運動療法は、痛みに対しても有効であるという報告があります。
痛みがあると活動量が減ってしまい、筋力低下などの悪循環になってしまいます。
痛みがあっても動ける、動かすことができるという認識を持つことが大切です。

また、近年では、認知行動療法やマインドフルネスなどのアプローチも推奨されてきています。

▼筋力トレーニング

運動することで、身体的・心理的にも良い影響があります。
座ってする運動から、ウォーキングやサイクリング、ジョギングなど身体状況や心理状況に合わせて運動を進めていきます。

運動のレベル(負荷量や頻度)を調整することも重要です。
注意点として、痛みが出現しない範囲で進めていきましょう。
痛みが出てしまうと、「また痛くなった」「運動しない方がいい」「動かない方が痛くない」と活動量の低下に繋がってしまいます。
痛みが出にくい運動方法を模索する必要があります。

▼関連痛について

痛みがある場所のみにアプローチしていても変化がないこともあります。
脳が過敏になっているため、原因が他の場所にあることもあります。
痛みのある部位だけではなく、他の部位も含めて様子をみていく必要があります。

 

▼予防方法

ストレッチは硬くなった筋肉の柔軟性を高めることができます。
また精神的にもリラックスする効果があるとも言われており、慢性痛に有効な場合があります。
できるだけ日々の生活の中でこまめにストレッチを行うことが痛みの予防に繋がります。

 

まとめ

人間は心の生き物なので、脳が長年感じた痛みを覚えてしまう「慢性痛」は意外とよくあることです。
物理的な側面、つまり痛みのある場所だけではなく、心理的側面、ストレスなどを多面的にみていくことが大切です。

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