あなたは「筋萎縮性側索硬化症(ALS)」を知っていますか?
筋萎縮性側索硬化症(ALS)ってどんな病気?
「筋萎縮性側索硬化症(ALS)」は、のどや舌といった呼吸に使う筋肉や手足の筋肉を動かす神経に障害が生じ、動かす力が落ちてくる病気です。
男性に多く、60歳代以上にみられます。また、人口では10万人に1〜2.5人との報告があります。
類似した疾患で「筋ジストロフィー」があります。
しかし、「筋萎縮性側索硬化症」が神経の疾患であることに対し、「筋ジストロフィー」は筋に障害が生じるの疾患です。
普段、私達は脳から「手を動かせ」「足を動かせ」という命令があるからこそ、各部位を動かすことができています。
しかし、神経の障害のため運動する神経がうまく機能せず、手足を思うように動かせなくなってしまいます。
筋委縮性側索硬化症(ALS)のリハビリ
筋委縮性側索硬化症のリハビリの目的には大きく3つあります。
- 日常生活動作の維持・向上
- 運動・嚥下・呼吸機能の維持・向上
- 本人や介護者の精神、経済、身体面のサポート
筋萎縮性側索硬化症は進行性のため症状が少しずつ進んでいきます。 進行を少しでも遅くすることが、リハビリの目的になります。
日常生活動作(ADL)の維持・向上
日常生活動作とは具体的に、
- 寝床から起きる
- 歯を磨く
- 顔を洗う
- トイレに行く
- ご飯を食べる
など、私達が普段行なっている動作のことをいいます。
この動作を円滑に行えるようにリハビリを行います。
動きにくい動作があれば、リハビリで反復したり、やり方を変えたりして練習していきます。
また、福祉用具を使うことも1つの方法です。
手すりや段差解消のスロープ・踏み台などがあります。
運動・嚥下・呼吸機能の向上・維持
筋委縮性側索硬化症(ALS)は、筋肉が細く硬くなり、力が落ちてきてしまいます。
腕や足に限らず、口周りや呼吸するための筋肉も細くなってきます。
これらの筋肉が細くなってくると、腕が上がりにくくなったり、話しにくくなったり、息苦しくなったりします。
そのため、筋肉が細くならないように運動を行なっていきます。
どんな運動が良いの?
●立ち上がり運動
椅子から立ったり・座ったりする運動
●バンザイ運動
椅子に座り、背もたれから背中を離して、バンザイする。
●口の運動
「あ」・「い」・「う」・「え」・「お」など、口を大きく開けて、一語一語はっきりと言う練習をします。
●舌の運動
舌を前方・左右・上下に動かします。
前方の時は「あっかんべー」のように、左右の時は「頬の裏側を舌で押す」ようにします。
上下の時は、舌先が鼻に触れるように舌を上へ伸ばして行ないます。
下の時は、「あっかんべー」と同じように舌先を顎に付けるように行います。
●呼吸の運動
両手を胸に当てて、鼻から息を吸います。
その時、両手で胸を下にさげるように軽く押しましょう。
息を吐くときは、口からゆっくりと吐きます。
また、別の方法として、両肩を上に上げながら息を鼻から吸います。
胸を張るように両肩を後ろに回します。
息を吐く時は、口からゆっくりと吐きましょう。
運動を行う際は、適切な負荷量を考慮することが大切です。
目安としては「翌日に疲れが残っていないか?」「痛みや疲れなどで動くことが難しくなっていないか?」を確認すると良いです。
精神面・経済面・身体面のサポート
介護する家族も精神面を始め、経済的な面や身体的な負担があります。
介護で自分の時間がとれないときは、ショートステイなど利用することで時間を確保することも一つの方法です。
(※ショートステイとは、介護する方の介護負担軽減や介護ができない場合に利用する、介護保険の宿泊サービスです)
経済面では、国の制度を活用することで治療費の補助が得られるものがあります。
手続きや条件などはありますが、利用することで負担を減らすことができます。
また、筋委縮性側索硬化症(ALS)は少しずつ進行していくため、当然のことながら、本人の不安感やストレスはとても大きくなります。
- どうして、自分だけこんな目に合うのだろう………
- こんなはずじゃなかった………
- 前はできていたのに………
進行する病態の変化により、不安感も増えていきます。
普段、何気なく行なっていたことができなくなっていくことに恐怖を覚える方も少なくありません。
できないことに目を向けるのではなく、できることやできていること、好きなこと、趣味などに注意を向けていく関わりが大切です。
まとめ
今回は、筋委縮性側索硬化症(ALS)のリハビリについてご紹介しました。
少しずつ症状が進んでしまう病気のため、運動や嚥下、呼吸などの機能が低下してきます。
運動をすることで少しでも進行を遅らせることが大切です。
また、精神面でも大きな負担がかかります。
出来ないことに目を向けるよりも、趣味ややりたいことなど、前向きに気持ちを整えていく取り組みが必要になります。