膝が痛む方は非常に多く、年齢を重ねると変形性膝関節症で悩んでいる方は決して少なくありません。今回は、変形性膝関節症とそのリハビリについてご紹介します
変形性膝関節症とは
「変形性膝関節症」とは、何らかの理由で膝に負荷がかかり、膝関節(軟骨部分を含む)がすり減ることで骨と骨が当たり、痛みが出現する症状のことです。また、男性よりも女性の方がなりやすく、とくに60代以上の男女別比率で見ると女性の方が各年代で1.5〜2倍と高くなっています。
スポーツ選手のように膝関節を使いすぎると骨や軟骨が摩耗する可能性がありますが、逆に運動不足による肥満なども膝に負担がかかります。特に40代に差し掛かったら適度な運動を常に維持することが、予防には欠かせない要素の一つです。
変形性膝関節症の症状
変形性膝関節症の主な症状として挙げられるのは、膝を動かしたときに現れる痛みです。この症状は、動作時痛と呼ばれます。動作時痛は段階ごとに重症化していきます。
【初期】
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起床後、起き上がるときや立ち上がった時などにこわばりを感じる
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重くて動かしにくい
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鈍い痛み
などの自覚症状があります。しかし、動かしていくと自然と治るため、気にならない方も多いです。
【中期】
動作中、痛みが途切れることなく持続したり、歩きづらくなったりします。
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歩くときしむような音がする
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腫れたり、熱感がある
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特に膝の内側が痛む
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両足の膝の間隔が広がる「O脚」になる
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しゃがみこみ、階段の昇り降り時の痛みが強い
【末期】
関節軟骨がほとんどなくなり、骨同士がぶつかり合い、初期や中期に出ていた症状が強くなります。日常生活に大きな支障が出てきて、精神面的にも慢性的な痛みにより活動を制限されることが多くなります。
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動作の間だけでなく、安静にして足を動かさないようにしていても痛みがある。
変形性膝関節症の原因
原因は大きく分けて2つあります。
一次性(原因がはっきりしないもの)
①膝への負担のかかる不良姿勢
膝に負担がかかる不良姿勢には、O脚やX脚などがあります。これらは、腰が曲がっている側弯症や膝が反る反張膝、外反母趾、偏平足の方がなりやすいと言われています。このような症状がある方は、立ち座りや歩行、階段などの動作時に、膝への負担が多くなってしまいます。日常生活でこのような状態を長年続けることで、変形性膝関節症のリスクを上げてしまいます。反張膝や外反母趾、偏平足は、特に若い女性にも多いため注意が必要です。
② 加齢
年齢は変形性膝関節症の発症に関与するリスク要因の一つです。年を重ねることで、腰が曲がり不良姿勢になりやすいだけではなく、筋力低下や体が硬くなることも膝への負担が増えるため発症するリスクに繋がります。
③ 体重増加(肥満)
膝関節には体重の4〜6倍の負荷がかかり、歩行時には、瞬間的に体重の7倍の負荷がかかるとも言われます。つまり、少しでも体重が増えると膝への負担が増えるため、肥満が要因の一つと言われています。しかし、肥満でなくても体重が増加すると膝への負担は増加します。加齢とともに筋力は低下するのに、体重だけが増えれば膝にかかる負担は増加してしまいます。
④性別
女性ホルモンの「エストロゲン」というホルモンが、骨・関節軟骨・筋肉を健康に保つ働きに関与していると考えられています。 50代を過ぎ、閉経に伴って、エストロゲンの分泌量が急激に減るため、女性は変形性膝関節症になりやすいといわれています。
⑤ 生活習慣
正座や坂道、階段の使用、農作業のような腰が曲がった姿勢を長時間続けるなど、膝に余計な負担がかかる生活習慣が変形性膝関節症のリスクを上昇させます。和式が中心だった生活も現在は洋式が中心となっていますが、正座をする習慣がある日本人はなりやすい傾向にあります。変形性膝関節症のリスクを上げる原因はいろいろあります。共通しているのは「膝への余計な負担の増加」が大きな要因となっています。
二次性(原因が特定できるもの)
二次性は原因がはっきりしているケースです。きっかけになりやすい病気は、下記のものが挙げられます。
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鵞足炎(がそくえん)
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腸脛靭帯炎(ちょうけいじんたいえん)
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靭帯損傷(じんたいそんしょう:前十字・後十字靭帯など)
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半月板損傷(はんげつばんそんしょう)
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関節リウマチ
変形性膝関節症のリハビリテーション
変形性膝関節症のリハビリテーションとして運動療法や生活習慣(食事療法)、装具療法などがあります。以下にご紹介していきます。
運動療法
運動療法とは、運動を用いて症状の軽減や予防を行う方法です。運動は年齢や性別に関係なく、膝の痛みを改善するのにとても必要です。関節周囲を守るために、筋力をつけることは欠かせません。また、膝周りの働いていない筋肉を動かすことで、たくさんの筋肉が働き、痛みの軽減を図ることができます。上記の2点により、膝痛の改善や膝への負担を軽減することができます。
生活習慣(食事療法)
生活習慣で変形性膝関節症の症状が増悪する要因として、体重増加や過剰な負担が膝にかかる動きが挙げられます。体重コントロールや膝に余計な負担がかかる動きの制限などの生活習慣を改善することが、変形性膝関節症の症状緩和や進行予防になります。
また、体重のコントロールも非常に重要です。一般的に膝関節には体重の4~6倍の負荷がかかり、歩行時には、瞬間的に体重の7倍の負荷がかかるともいわれます。体重を1キロ減らすだけでも、膝への負担を減らすことができるため、体重をコントロールすることが大切です。
具体的には、食事量や炭水化物を減らすことで、カロリーを調整します。また、ウォーキングやジョギングなども効果的です。他にも、日常生活で膝に余計な負担がかかる動作は避ける方が望ましいといえます。例えば、重い荷物を床から持ち上げる時や階段、急な坂道、正座などに配慮することも必要です。また立ち上がり方など、日常的に行う動作を工夫することで負担を減らすことができます。
装具療法
装具療法とは、手、腰、足、膝の痛み、変形などに対して装具を装着し、痛みの軽減や変形の矯正、患部の負担の軽減を図ることをいいます。コルセットも装具療法になりますが、変形性膝関節症ではサポーターやインソール(足底板、そくていばん)が有効です。
変形性膝関節症の治療において、体重の軽減や、筋力の向上は症状緩和に有効ですが、効果を発揮するまでに時間がかかります。その間、痛みがある時期が続いてしまうと、活動量が減り、筋力がさらに低下することで、変形や痛みがさらに強くなる可能性が考えられます。そのため、運動療法と並行して、即効性があるサポーターなどの装具の使用を検討していきます。
サポーター
膝の変形が進行してくると、膝が不安定になってきます。歩くとき、体重が膝の外側や内側へかかり過ぎてしまいます。そこでサポーターを使用し、膝周りの負担を軽減し、結果として膝の痛みを軽減させることが可能です。
サポーターには、大きく分けて「軟性サポーター」と「硬性サポーター」の2つがあります。
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軟性サポーター
薬局やスポーツショップ、福祉用具で取り扱っているようなゴム製のサポーターです。対象としては、変形の進行や痛みが軽度の方になります。
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硬性サポーター
義肢装具士などの専門職、あるいは変形性膝関節症を専門とする販売所のみで取り扱っている物です。金属製のサポーターがあります。物によって効果の違いがあるため、ご自身の膝関節の変形や症状の程度に合わせたものを正しい方法で装着します。その時は医師や義肢装具士に選択してもらうことをお勧めします。
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インソール
一般的には、足底板や中敷きともいわれます。それぞれの足に合わせて外側を高くしたり、内側を高くしたりとその方に合わせてインソールの形を調整していきます。調整することで、膝への負担軽減や歩きやすさなどの変化が得られます。
生活で注意すること
できるだけ膝に負担をかけない工夫や生活習慣を身に付けるようにするなど日常生活から気を付けることが大切です。また、太ももの筋肉を付けるように運動を無理のない範囲で続けましょう。
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正座は避けるようにする。
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トイレは和式よりも洋式を使うようにする。
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膝への負担を減らすために、歩く時は杖を使う。室内であれば壁などを利用する。
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階段などは手すりを使う。
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段差解消などのリフォームを行い、膝への負担を減らす。
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寒い季節は、痛みが強く出やすいため、入浴などで膝周りを温める。
自宅で出来る自主トレーニング
自宅で簡単にできる変形性膝関節症に有効な筋力トレーニングをご紹介します。
大腿四頭筋セッティング
「方法」
膝と床の間にボールやタオルなどを挟み、それを床に向けて押しつぶすようにして膝を伸ばします。
「注意点」
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痛みを感じる場合は中止。
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手で太ももの内側の筋肉が働いているかを確認しながら、楽にできる範囲でやること。
スクワット
「方法」
直立した状態から両足の屈伸を繰り返す運動です。
「注意点」
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痛みがある場合は中止。
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足先が膝よりも前に出たり、姿勢の左右の非対称が強くなるほど深く膝を曲げない。
膝伸ばしストレッチ
「方法」
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両足が床につくように浅く椅子に座る。
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片足を前に伸ばし、伸ばした足に両手を置いて、つま先を上に向ける。
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両手でゆっくりとひざを下に押し付けながら体を指先の方へ倒す。
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呼吸は止めず、この状態を10秒間保持する。
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元に戻し、反対側の足も同じように行う。
「注意点」
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痛みが出ない範囲で行う。
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筋肉が伸びているのを意識する。