今回は関節リウマチの症状とそのリハビリについてご紹介します。
関節リウマチとは
免疫の異常により、手足の関節に炎症が起きてしまい、腫れや痛みが出てしまう病気です。
進行してくると、関節の変形などが起こってきます。
関節リウマチの原因
原因は、不明とされています。よくいわれているのが、免疫系の異常があることです。免疫系は、細菌やウィルスなどから体を守るためのシステムですが、システムの異常によりリウマチの症状が起こるとされています。つまり、免疫が関節を守っている組織や骨、軟骨などを攻撃してしまい、破壊してしまうのが関節リウマチです。
関節リウマチの症状
リウマチには以下の症状があります。
①全身に起こる症状
微熱、体重減少、貧血、リンパ節の腫れなどのほか、目や口の乾燥、息切れ、だるさ、疲労感などがあります。
②関節に起こる症状
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朝のこわばり
リウマチに特徴的な症状です。朝、起きたときに関節が動かしにくい、ぎこちないなど関節の動かし始めに感じる違和感を「こわばり」といいます。
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関節炎
熱っぽくなって腫れますが、赤く腫れることは稀です。動かすと痛みが強くなります。こうした関節炎は、手首や手の指の付け根、第2関節、足の指の付け根などに起きやすいです。
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関節水腫 ( かんせつすいしゅ )
関節に炎症が起きると、関節の中にある液体が溜まります。この状態を関節水腫とよびます。膝のお皿周りが腫れたり、ひざの裏側が袋状にふくらみます。
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腱鞘炎 ( けんしょうえん )
腱は手や足の筋肉が骨に付着するところにあり、炎症が起こると、腫れて指などの動きが悪くなります。
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関節変形
リウマチが進行すると、関節が破壊され、筋肉も萎縮するなどして、関節が変形します。外反母趾や指の先端が曲がる(スワンネック変形)などがあります。
③ 関節以外に起こる症状
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リウマトイド結節 ( けっせつ )
肘や膝などにできやすく、大きさは米粒大から大豆程度まで様々ですが、痛みはありません。
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肺障害
リウマチ肺とよばれる間質性肺炎 ( かんしつせいはいえん ) や肺線維症は、症状として息切れや空咳などがみられます。また、肺に水がたまる胸膜炎 ( きょうまくえん ) が起こることもあります。
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悪性関節リウマチ
悪性関節リウマチとは、血管に炎症が起こることがあり、炎症症状が重くなる状態をいいます。心筋梗塞や間質性肺炎、腸間膜動脈血栓症などを起こしやすく、手足の細い血管の炎症では、皮膚潰瘍や神経炎などを起こします。
関節リウマチのリハビリテーション
関節リウマチのリハビリを行う目的として、
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筋力、関節の動き、姿勢などのバランスを改善させる。
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個人の状態に適した起き上がり方や歩き方などを維持・改善させる。
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和式の生活など個々の日常生活に合わせた動きを維持、改善させる。
などがあります。
注意点
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運動前に関節に痛みがある場合は、暖めたりして、筋肉の緊張、痛みを軽減してから行う。
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運動後に痛みが強くなった場合は、翌日の運動量を減らす、休むなどの調整を行なう。
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炎症が強いときは関節に負担をかけ過ぎないようにする。
筋力強化について
‘‘関節リウマチ患者の方のうち、およそ2/3では、健常者に比べ筋力が25〜50%程度低下する‘‘(日本基礎理学療法学雑誌 第15巻2号.2012)と報告されています。
筋力を鍛えることで、歩行時の膝関節などに加わる衝撃を和らげ、関節の不安定性を改善することが期待できます。
炎症が強い時期では、関節への負担を軽減するため、関節を動かさないでできる運動(等尺性運動)を行なっていきます。
可動域訓練について
可動域訓練(関節を動かす訓練)のときは、少し痛いかなと感じるところまで、ゆっくり動かします。また動かす方向も注意しながら行なっていきます。
痛み、変形の程度、炎症の程度などを確認して、動かす強さ、回数などを調整していきます。
歩行訓練について
関節リウマチ患者の歩行の要因は様々です。膝関節の不安定性が強い方、膝関節周囲の筋力が弱っている方では、歩いている時に、膝が曲がってしまうことがあります。
このような場合は、大腿四頭筋などを中心に筋肉を鍛えることが重要になります。
骨盤、体幹の回旋運動が低下している方は、積極的に体幹筋力や骨盤周りの筋肉を鍛え、歩行時に体幹の回旋を促すような練習を行います。また、足外反母趾、扁平足などにより、足の裏に痛いマメやタコが生じている状態もよくみられます。足関節や足部変形の患者さまは、靴・インソール、フットケア、足裏の筋肉を鍛える等、歩行能力の維持を目指します。
日常生活訓練
多くの関節リウマチ患者の方で、手指・手関節の変形がみられます。その変形の程度、形態は個人により違います。日常生活における食事、排泄、衣服の着脱など日常生活で必要な動作をできるようにすること、料理、洗濯、手芸などより複雑な動作をできるように進めていきます。物をつまむ動作や腕を伸ばす動作など肩や肘、手の動きを改善し、握力をつけるように筋力強化も行います。特に親指と人差し指でものを摘んだりすることができない方には、装具を作ったり、手術の説明を行うことが大切です。
日常生活で気を付けること
主に以下のことを日常生活の中で注意します。
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症状を悪化させるタバコは厳禁
喫煙することで関節リウマチの発症リスクを高めます。その他にも薬の効きを悪化させ、治療に影響します。
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食事はバランス良く
骨粗しょう症や貧血などの合併症を少しでも予防していくためには、栄養のバランスが大切です。たんぱく質や、カルシウム、鉄分を摂るようにしましょう。
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睡眠・休養を十分取るようにする
疲労は症状悪化のきっかけになることがあります。休養をとって体調を整えましょう。また、ストレスの軽減にも繋がります。
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体を動かして力をつける
炎症や痛みの病状が落ち着いてきたらできる範囲で、運動を続けましょう。自宅でも簡単にできる運動や体操を行いましょう。炎症が強い時は関節を動かさずにできる体操がありますので、体調に相談しながら無理せず行うことが大切です。
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温冷刺激で痛みを和らげる
炎症がおさまっているときには、温熱や光線、超音波による温熱療法が適しています。(ただし、人工関節や、心臓ペースメーカーを植え込んでいる人は受けられないことがあります。)自宅には、光線や超音波などはないと思うので、ホットパックや、温めたタオルなどで対応することができます。また、炎症が強く、痛みや腫れがあるときは保冷剤などで冷やすことも一つです。
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関節に負担をかけないように暮らす
立ち座りや、食事、排せつなどの際にも関節は大きくかかわっています。持ちやすい食器や、自助具や装具を利用することで関節への負担を和らげることができます。また、和式の環境よりも洋式の生活様式の方が関節への負担が軽くて済みます。例えば、畳に座るより、椅子に座ったほうが膝や股関節の負担を減らすことができます。立ち上がるときは、高い所から立ち上がるのが関節に負担は少ないです。
自宅でできるトレーニング
以下に自宅でできるトレーニングをご紹介します。
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手の運動
①両手で柔らかいボールを持つ。
②ゆっくり力を入れてボールを潰し、 5秒間キープする。
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足の運動
①椅子やベッドに座る。
②柔らかいボールを膝と膝の間に挟む
③両膝でボールを潰し、5秒間キープする。
まとめ
関節リウマチでは、炎症が強いときは、関節に負担をかけすぎないようにすることが大切です。炎症の度合いにより、運動する負荷量は変わってくるため、注意が必要です。運動だけではなく、食事はバランスよく摂るようにしましょう。
睡眠もしっかりとることで、ストレス軽減にも繋がります。
また、寒い時期は、痛みが出やすくなる場合もあるため、しっかりと温めたり、冷やすことのないように普段の生活でも気を付けてもらえると良いと思います。