要介護者が同居している世帯では、介護する人が悩みやストレスを抱えている割合が、全体の5割~7割に当たるとのことです(国民生活基礎調査の概況)。どうすれば介護の負担を減らすことができるのでしょうか?
今回は、介護疲れやストレスとうまく付き合っていく方法をお伝えします。
介護を行う人の介護疲れの主な要因
「介護疲れ」の要因がなにかご存じでしょうか?
まずは「介護疲れ」の要因を把握することからはじめてみましょう。
介護疲れの主な要因①身体的な負担
車椅子・ベッド間の移乗、深夜のおむつ交換、食事介助などにより身体的疲労や腰痛に繋がります。
その積み重ねにより介護ストレスが蓄積してしまうといわれれています。
介護疲れの主な要因②精神的な負担
思うように食事を食べてくれない、尿漏れによりオムツや下着などを替えないといけない、何度も呼ばれるなどのやり取りが繰り返されることで精神的ストレスが蓄積されてしまいます。
介護疲れの主な要因③経済的な負担
オムツ代や食事なども、蓄積すると金額が大きくなります。
また、介護に時間を取られるため、必然的に収入は減ることが多くなって経済的負担は増加してしまいます。
軽視できない「介護疲れ」による社会的問題
介護疲れやストレスは自分だけの問題ではなく、近年では社会問題へも発展しています。
いくつかの問題点を挙げてみました。
介護疲れによる社会的問題点①介護離職
家族の介護のために仕事を辞めたり、介護と仕事の両立が困難なため仕事を辞めることを”介護離職”といいます。
辞めることで収入は減ってしまい、経済的に苦しくなります。
そのため、生活保護を受けるというケースも報告されています。
介護疲れによる社会的問題点②老老介護
超高齢社会に突入した日本では、高齢者が高齢者を介護する”老老介護”が大きな問題になっています。
介護者自身に体の衰えが見られ、身体的にも大きなリスクになることも懸念されます。
また、介護者が認知症を発症し、介護者自身も介護が必要となってしまう状況もあります。
介護疲れによる社会的問題点③介護うつ
- 介護による悩みや愚痴を相談できない
- 身体的負担や精神的負担を我慢する
など、いろんなことを自分一人で背負ってしまうことで、介護うつに繋がる可能性が高くなります。
身体的・精神的負担を減らす方法
介護負担を軽減する方法について以下にまとめてみました。
介護保険サービスを活用する
訪問介護
訪問介護とは、ホームヘルパーが自宅を訪問して、入浴や排泄、洗濯、掃除といったサービスを提供してくれます。
訪問入浴
訪問入浴とは専用の浴槽を使い、自宅で入浴ができるサービスです。
2〜3名の介護スタッフで行うため、重度・寝たきりの方でも安心です。
デイサービス(通所介護)
デイサービスとは、機能訓練・入浴・食事といった介護サービスを日帰りで利用する、通所型サービスです。
自宅から施設までを送迎してくれるので、安全に利用できます。
外部との交流ができるのも一つの魅力です。
ショートステイ(短期入所生活介護)
ショートステイとは短期間だけ介護施設を利用して、食事や入浴補助といった介護サービスを受けられる宿泊サービスです。
利用日数には上限があるため、ケアマネジャーに相談してみましょう。
介護保険外のサービスを活用する
介護保険外サービスとは、介護保険の対象にならないサービスのことです。
費用は全額自己負担ですが、ヘアカットを行うことができる訪問美容やパットなどを配達してくれるなど多種多様なサービスを利用することができます。
高齢者支援の行政サービスを活用する
各市区町村には、独自の高齢者支援サービスがあります。
代表的なものが”紙おむつ助成事業”です。
オムツ代だけでも、月に数千円〜数万円の費用がかかりますが、そのうちの何割かが助成されるサービスです。
また、手すりなど住宅改造費用の助成などもあります。
助成内容は市区町村により違うため、ホームページや地域包括支援センターなどで確認する必要があります。
ストレスとうまく付き合う
ストレスと上手く付き合う方法を自分なりに見つけておくことも大切です。
呼吸法やヨガ・アロマテラピーなど、さまざまなリラクゼーション方法があります。
その中で自分にあったものを見つけるといいでしょう。
また、運動することで身体や心をリフレッシュすることができます。
ただし、無理のない範囲で行うことが大切です。
忙しいときは、ちょっと散歩に出るだけでも心身ともにリフレッシュできます。
運動と合わせてストレッチを意識的に取り入れることで、身体も心もほぐれてリラックスに繋がりますよ。
睡眠時間を確保する
日本人は睡眠を疎かにしがちと言われていますが、睡眠不足になると身体や心に重大な悪影響が出てきます。
特に在宅介護をされている場合は、介護により十分な睡眠が取りにくいため、デイサービスなどの介護サービスも活用して睡眠時間を確保することが大事です。
交流を意識する
悩みごとは一人で抱え込まないことです。
ご家族や友人、知人など親しい人たちとはもちろん、同じ立場の人が集まる家族会や介護教室などに参加して話してみると気持ちが楽になるかもしれません。
まとめ
古来、日本では親族が介護するのが当たり前とされており、介護は”家の問題”と認識されていましたが、近年は改められ、公的にも様々な補助が用意されており、社会全体で介護することが当たり前となりつつあります。
介護をするにあたり、自分なりに介護疲れを癒す方法を見つけることはとても重要です。
介護疲れは単に身体への負担だけではなく、精神的・経済的負担も重なるため、自身だけの問題として抱え込まず、必要であれば他者に協力を仰ぎ、介護者と被介護者の両方にとって良い方法を探していきましょう。