道具に頼ると足腰が弱くなる?
何らかの疾患や入院により、自分の力で歩くことが難しい状況になる方がいらっしゃいます。そんな方にリハビリ職として、杖や歩行器(歩行補助具と言います)の使用をお勧めすることがあります。そのときに、ご利用者から「多少フラフラするけど自分で歩けます。道具に頼ると逆に足腰が弱くなるのでは?」とよく質問をいただきます。
さて、本当にそうなのでしょうか?
歩くことで「睡眠・栄養」も改善に向かう
変形性膝関節症、脊柱管狭窄症などなど、その他たくさんの疾患で「歩行」に支障が出ます。歩くと身体のどこかに痛みが出たり、すぐに息が切れて疲れてしまったりします。
リハビリにおいて、歩くことは日常生活の中で非常に大切です。ただ単に運動習慣を確立するだけでなく、夜、眠りやすくなったり、ご飯をきちんと食べられるようになったり、生活リズムを整えて健康的な生活を送る上で重要な「起点」になります。
また、歩くことで鍛えられるのは足腰だけではありません。
歩くことで心肺機能が向上し、日常生活の中で疲れにくくもなります。結果、座ったり横になったりしている時間が減り、日中の活動量が増加します。
歩くことにおいて、最も考慮すべき重要な要素は「量」なのです。
もちろん姿勢を正して歩いたりする「質」も重要です。けれど、まずは日常生活の中で、安全に、且つ安心して歩ける機会をたくさん作ることが最優先となります。
基本的に人間の体は、運動を反復することで徐々に体が慣れ、生活で使えるレベルにまで定着していきます。
今まで病気や入院によって生活の中で運動する機会が減ってしまった方は、まずは日常的に歩くなど、運動をする習慣を取り戻すことが重要です。
道具を活用して健康的な生活を
例え、自分で歩ける方でも、
- 短距離しか歩けない
- 転倒する可能性がある
そんな方は杖や歩行器を使用しながら、日常生活の中で転倒する可能性を減らし、まずは安全に歩ける状況を作ることが大切です。
その上で、リハビリの一環として、誰かに付き添ってもらいながら杖なし・歩行器なしの状態で歩く練習をしていきます。杖や歩行器をできるだけ使わないのではなく、活用できる道具はできるだけ有効に活用するということです。
その上でリハビリを行い、併用して「杖なし」「歩行器なし」で歩く練習を行なっていくことが身体の機能の回復を早め、健康的な生活を送るために大切なことです。