子どもの問題行動に対して「なぜ」という視点で理解することと、そのために重要となってくる感覚――特に分かりにくいとされている≪前庭感覚≫や≪固有感覚≫について、白鳳短期大学の高畑脩平先生(白鳳短期大学 リハビリテーション学専攻 作業療法学課程 講師 / 作業療法士)に実技も取り入れながら分かりやすく解説いただきました。
前庭感覚とは?
前庭感覚は、自分の体の傾きやスピード・回転などを感じる感覚です。
受容器は耳の奥にある耳石器と三半規管です。
前庭感覚には主に以下の5つのはたらきがあります。
- 覚醒を調節するはたらき
- 重力に抗して姿勢を保つはたらき
- バランスをとるはたらき
- 眼球運動をサポートするはたらき
- ボディイメージ(体の機能を把握する)の発達を促すはたらき
例えば、電車に乗っているとき、体の傾きや重力を感じても体を垂直に保つことができますよね。
これは前庭感覚がしっかりと働いてくれているおかげです。
私たちが地球の重力に対して体を垂直に保てているのも、この感覚のおかげです。
また、前庭感覚には筋肉のハリを調整して姿勢を保持する役割もあります。そのほか、覚醒レベルを上げたり、逆にリラックスさせたりする効果もあります。
ジェットコースターとハンモックをイメージすると分かりやすいかもしれません。
固有感覚とは?
≪固有感覚≫は、「固有受容感覚」や「深部感覚」などとも呼ばれ、体の様々な部分や位置の動き、関節の曲がり具合、筋肉への力の入れ具合などを感知する「身体内部の目」のような働きをしています。
普段、人はこの感覚を意識することはほとんどありません。しかし、体や手足をどのように動かすかなど、実は大きく依存していると言われています。
例えば、目を閉じたままジャンケンをしてみましょう。
・・・どうですか?出したい手の形を作ることができましたか?
固有感覚が指の状態を脳に伝えることで、自分の手を見ていなくても手を思いのままに動かすことができるのです。
子どもの「問題行動」への理解
固有感覚や前庭感覚に何かしらの不具合があれば、それらの役割が「苦手」として現れ、周囲からは問題行動として捉えられてしまいます。
問題行動のみを見ていては安易な解決策しか講じることができず、子どもたちにとっての本当の解決にはならないのだと改めて感じました。
また、最後に動画を用いて評価から介入までの事例紹介がありました。これまでの講義内容が実践的にまとめられており、明日から臨床現場で活用できるものばかりでした。
「理解することで優しくなれる」
とても印象的な高畑先生の言葉です。
「問題行動」と一言で片づけるのではなく、「なぜ」そのような行動をとっているのかをしっかりと分析的な目で見なければならないと思いました。
次回は8月4日(日)「臨床美術体験会〜色のアラベスク〜」。
臨床美術(クリニカルアート)とは、独自のアートプログラムに沿って創造活動を行うことにより脳が活性化し、子どもからご高齢の方まで健康で感性豊かな社会の創出を目的としています。
今までにない、医療・美術・福祉の壁を越えたアプローチが特徴です。
→終了しました。