年齢を重ねるにつれて腰や足を以前のように動かせなくなってくることがあります。
なかでも腰痛を抱える方が一番が多く、次いで膝の痛みを訴える方が多いです。
特に膝の痛みを訴える方でよくある疾患が「変形性膝関節症」です。
今回はその「変形性膝関節症」についてご紹介します。
変形性膝関節症とは
変形性膝関節症は、膝の関節にある軟骨が徐々に摩り減って下の骨が露出し、骨のトゲができたり、骨が変形したりする疾患です。
その結果、膝関節の中で炎症が起き、関節中に関節液が過剰に貯まります。そうなると、膝を動かすと痛みが出てたり、曲げ伸ばしがしにくいといった症状が現れてきます。
全国に1000万人の患者がいるといわれており、整形外科的疾患での有病率は腰痛に次いで第2位です。
中高年以降の女性に多く、特に40歳以降に多く見られます。
実際に、私たちが訪問しているご利用者の中にも「膝が痛い」という訴えは頻繁に聞かれます。
変形性膝関節症の種類
変形性膝関節症は、成因により「一次性」と「二次性」に分けられます。
一次性
変形性膝関節症の多くは、加齢変化と筋肉の衰えや肥満、無理な動作などの多くの要 因が重なり、膝の関節軟骨がすり減り、炎症を起こして発症 します。このように明確な原因がないものを「一次性」といいます。
二次性
一方、怪我や病気など、原因が明確なものを「二次性」といいます。
膝関節症で悩んでいる方の多くの方が一次性で、いわゆる加齢によるものです。
水を抜くとクセになる?!
膝が痛くなった時に、整形外科などで膝の水を注射器で抜くと「クセになるから抜かないほうが良い」という話を聞かれたことがあるかと思います。
変形性膝関節症になると関節内で炎症が起きるため、それをに応じて関節液(水)がたくさん出てきます。炎症がおさまるまでは関節液が過剰に作り出されますが、抜くとクセになるということはありません。
むしろ、関節液を抜いたほう関節が動かしやくなり、痛みが軽減することも多いです。
変形性膝関節症の予防
膝に過剰な負担がかからないように生活することで、変形性膝関節症を予防することができます。
減量
体重が増えると膝への負担も増えるため、
- 適度な減量をすること
- 適正体重の維持
は効果的です。運動量を増やすことよりも、食事を制限するほうが簡単で効果が出やすいといわれています。糖質はなるべくごはんやパンなどの主食で摂り、お菓子などの間食をやめることが減量につながります。
糖質には健康を維持するために必要な量があります。たとえば、40代女性であまり活発に運動しない場合、糖質220g以上が目安になります。
また、糖尿病やその予備軍の方は糖質の摂取量にご注意ください。
(参考――みんなの食育:農林水産省)
膝に負担の少ない運動の継続
自転車漕ぎやプールでの運動は、膝関節に負担が少ない運動です。
手軽にできる運動としてスクワットがありますが、スクワットは膝への負担が大きいので、少しだけ膝を曲げるハーフスクワットもオススメです。
負担の少ない靴を使う
ヒールを履いたり、足腰に負担がある靴を避け、出来るだけ歩きやすくクッション性の高い靴を履くことで膝への負担を減らすことができます。
膝を冷やさない
冷えると筋肉がこわばり、痛みが出やすくなります。入浴して温めたり、市販のサポーターなどで保温することが有効です。
変形性膝関節症の治療
変形性膝関節症では、基本的に膝の軟骨や軟部組織の摩耗により痛みが出ます。
軟骨や軟部組織を完全に元の状態に戻すことは困難だとされているため、現在は痛みを軽減し、膝関節がしっかりと動き、日常生活に支障が出ないようにすることを目標として治療を進めていきます。
まずは保存療法が検討されます。
保存療法では、
- 薬物療法
- 運動療法
- 物理療法
- 装具療法
が主に行われます。
それでも改善せず、生活に大きな支障がある場合は手術(骨置換術など)が検討されます。
薬物療法
非ステロイド系消炎鎮痛剤や、漢方が内服として処方されることが多いです。また、ヒアルロン酸やステロイドの関節内注射を行う方法もあります。
運動療法
運動療法の主な目的は、
- 減量
- 大腿四頭筋(足の太腿の筋肉)を鍛える
ことが主です。関節を動かさず、一定の関節の角度で筋肉を収縮させる「等尺性運動」が関節保護の観点から推奨されています。
物理療法
温熱療法や電気刺激療法などがあります。自宅でお風呂に入浴し、膝を温めることも有効です。
装具療法
サポーターを使用したり、靴の中に中敷を入れて足を安定させる治療法があります。
まとめ
変形性膝関節症になると、膝の痛みのために歩くことが辛くなり、日中の活動量が低下します。その状態が長期間続くと筋肉が萎縮し、結果として肥満になりやすく、より膝の痛みが増強する、という悪循環が起こってしまいます。
まずは膝関節の痛みを軽減することで良い循環にを作り出すことが大切です。
ぜひ参考にしてみて下さいね。
参考)日本臨床整形外科学会