メディケア・リハビリの新規事業『Rehavel』(以下:リハベル)を立ち上げた南さんに、その想いや事業内容について伺いました。
※リハベルとは、「旅行に行きたい!」と思う全ての方が、年齢や病状、身体状況に関わらず、「いつでも」「どこでも」自由に旅行へ出かけられるサービスです。
旅行専門の療法士・看護師があなたの旅行をプランニング&コーディネートします!
ーーリハベルを立ち上げた経緯を教えてください。
南:私はもともと、理学療法士として総合病院で勤務していました。
その経験から、患者さんはADL(日常生活で行う動作)を満たしたその先にある「なにか」を実現するためにリハビリを頑張っていると強く感じていました。もちろんADLも重要ですが、その先のQOLがさらに重要だと思ったのです。
しばらくその病院で勤務した後、旅行や外出支援でQOL向上のためのお手伝いがしやすい在宅でのリハビリに関わりたいと考えるようになり、メディケア・リアビリへ入職しました。
そういった経緯があり、入職した時から旅行や外出支援に関わる事業に携わりたいと思っていました。
ーー在宅でできることはたくさんあると思いますが、なぜ”旅行”や外出支援”なのでしょうか?
南:病院で働いていた時に関わらせていただいた、ある患者さんの影響が大きいと思います。
その方は膝に痛みがあり、整形外科で治療を行なっていましたのですが、「生涯掛けて日本の全ての100名山に登頂したい」という強い目標を持っている方でした。
当時、その方は50歳代で、90山登ったところで膝が痛くなり、登山を続けることができなくなってしまいました。残り10山を登れば夢が叶う状態です。私はその夢に強く共感し、全力で応援したいと思いました。
膝の痛みのケアから始め、まずは歩くことができるようにリハビリ専門職として精一杯関わらせていただきました。
しかし、膝の痛みがなくなって歩けるようになったとしても、山を登れる状態ではありません。
歩ける=山を登れるという訳ではなく、その間には能力的に大きな差があります。
目標を達成するため、患者さんと文字通り二人三脚で頑張りました。
普通の道を何とか歩けるようになったら、今度はハイキングで坂道や不整地を歩けるように練習する計画を立てました。ハイキングができるようになったら、次はトレッキングに挑戦するなど、徐々に負荷を上げ、より実践的な内容の計画を実行に移していきました。患者さんも精一杯それに応えてくれました。
結果、その方は再び登山ができるようになったのです。
この患者さんに関わらせていただいたことで、「ADLが満たされたその先にあること」を意識することが、人の健康や生活に関わる上で非常に大切なことだと痛感しました。
そういった思いがあり、リハビリと旅行を提供するサービス「リハベル」を提案させていただきました。
ーー素晴らしいお話ですね。その方のように、旅行に行きたいけど何らかの理由で行けない方は、たくさんいらっしゃると思います。実際にどのような流れでリハベルを利用するとよいのでしょうか?
南:はい、パンフレットを作成していますので、詳しくはそちらに掲載していますが、簡単に「リハベル」の内容を紹介させていただくと、オーダーメードで旅行内容を提案するサービスになります。
個人向けと団体向けがあり、パックツアーのような形も可能ですし、完全なる個人オーダーも可能です。
- 国内パッケージツアー:観光内容や移動手段、宿泊地など具体的な旅程が決まっている中からお選びいただけます。
- オーダーメード旅行:あなただけのオリジナルの旅を実現できます。あなたの「これがしたい!」「ここに行きたい!」をお聞かせください。
リハベルは、『旅行に行った先で何をしたいか?を叶えるサービス』なので、まずはご希望内容をお聞きし、相談(ヒアリング)を中心にお話を進めていきます。ご利用者と一緒に旅行の計画や内容、実際にどのように実行するかを決定していきます。
ご病気のことやお体の状態を療法士が専門的に判断し、それに合った旅行のプランを提案させていただきます。
もちろん、「旅行に行った先でしたいことを叶えること」がリハベルのサービスの目的なので、旅行の日程は柔軟に計画でき、日帰りでも宿泊でも対応が可能です。
ーー具体的にはどんな形で旅行ができるのでしょうか?
南:すでにたくさんの方にリハベルを利用していただいています。
具体的に、この方の場合(鳴門温泉旅行)ですと、娘さまから「普段はお風呂に浸かれないお母さんを、ゆっくりと肩まで湯船に浸からせてあげたい」とご相談がありました。
お話を詳しく伺うと、お母さまは床へ立ち座りができないため、お風呂の中に椅子を置いて座って入浴されていたそうです。半身浴になるので、いつも肩が湯船から出ている状態ですね。
床への立ち座りをクリアする方法をいっしょに考え、「温泉にゆったりと肩まで浸かる」ということを目標に旅行の計画を提案させていただきました。
結果、娘さまの願いは叶い、お母さまにも非常にご満足いただけました。
団体さまでは、大阪城のお花見ツアーも計画させていただきました。お花見の前にみんなで焼肉を食べたときのみなさんの笑顔がとても印象に残っています。
サービスの全体的な流れとしては以下になります。まずはお気軽にお問い合わせください。
ーーオーダーメイドの旅行と聞くと、料金が気になってしまいますが・・・(笑)
南:パンフレットにも記載がありますが、料金に関しては以下の通りです。
具体的には、1名が3時間同行する日帰りの旅行でしたら、15,000円になります。同行のスタッフが必要でない場合は、旅行企画や手配など旅行のお取扱いに関わる料金が旅費に加わるのみです。
これらは旅行業法に定められている範囲のものとなっています。
ーー最近、高齢者向け、あるいは障がいがある方向けの旅行サービスを見かけるようになってきていますよね。それらとの違いはどこにありますか?
南:他の旅行サービスとの違いは、「医学的知識と国家資格を保有する療法士が、お客様に丁寧にヒアリングし、ご病気やお身体の状態を考慮した上で旅行を計画・提案、実行するところ」です。
在宅で関わらせていただいた経験を元に、ご相談に真摯に向き合い、いつでも、どんな時でも「旅行に行った先でしたいこと」に焦点を当てたサービスを提供することが私たちの使命だと考えています。
ーー少し前は物理的なバリアフリーが社会的に謳われていましたが、現在では、心理的・構造的なバリアフリーを意識する人が増えています。そんな中で旅行という既存のバリアを解消するサービスは素晴らしいと心から思いました。
貴重なお話をありがとうございました。