半側空間無視(USN)をご存知でしょうか?
今回は半側空間無視(USN)の症状とそのリハビリ方法についてご紹介します。
半側空間無視(USN)とは?
脳卒中(脳梗塞や脳出血)で右半球を損傷した方の約4割に合併する症状で、視力の問題とは別に左側の空間が認識しにくい状態のことを指します。
ほとんどが左側の麻痺によって生じるものとされています。
症状は?
半側空間無視の症状がある方は、実際には左側が見えているにも関わらず、認識することが難しくなります。
分かりやすい症状としては、
- 右ばかり向いている
- 移動していて(車椅子や歩行など)左側にあるものによくぶつかる
- 食事の際に左側に置いてあるものに気付かず食べ残す
- 病院などでは、左側に自身の部屋の入り口があると通り過ぎる
などが代表的です。
半側空間無視とは別に、視力の問題で左側が見えない症状のことを「左同名性半盲(ひだりどうめいはんのう)」と呼びます。
この場合は、頭を左側に振ることで左側のものを見ることができます。
しかし、半側空間無視は、極端に言えば左側の空間そのものがなくなってしまっている状態なのです。
半側空間無視(USN)のリハビリ
半側空間無視(USN)のリハビリの方法はたくさんありますが、今回は代表的なものをご紹介します。
対症的アプローチ
左側への注意集中練習
意識的に左へ注意を向けるように練習します。
言葉で注意を促すことはもちろん、音を出したりして左側への注意を促すこともあります。
視覚操作練習
右側から左側へ探索を行うように促し、「もう左にはなにもない」というところまでものを探してもらいます。
左側への注意喚起だけでは逆に右側のものを見落とす可能性もあるので、”探索”という方法が有効な場合もあります。
右側に生活用品を置くのは良いリハビリ?
半側空間無視がある方に対して、生活用品をわざと右側に置く、というリハビリ方法があります。
歩行練習など他のリハビリでもそうですが、日常生活の中で常に努力が必要な状態にしてしまうと、本人のストレスになり過ぎる場合があります。
基本的には、生活では安楽(安心して楽である状態)を基本とし、リハビリなどの場で少し頑張ってみるのがおすすめです。
ADL志向型アプローチ
ADLとは、日常生活動作のことです。
ADL志向型アプローチでは、家事動作などのビデオフィードバック練習などがあります。
今はスマホで手軽に動画を撮影できるので、実際に半側空間無視(USN)がある方の家事動作を撮影し、本人に確認してもらう、という方法です。
自身の動作を客観的に見ることができ、反復して確認することで注意の偏りが均一化する効果があるとされています。
まとめ
右半球に障害がある脳卒中の方の約4割が半則空間無視(USN)を発症し、左側にあるものに意識が向きにくくなります。
リハビリ方法として代表的なものは、
- 対症的アプローチ
- ADL志向型アプローチ
があります。
基本的な方針として、左側への注意喚起を繰り返し行うことで改善を図ります。
半則空間無視(USN)は見た目ではわからず、本人以外の他者は気付きにくい症状のため、周囲の人の理解や注意深い観察が大切です。