よく耳にする「五十肩」。
医学的には「肩関節周囲炎」といいます。
名前の通り、50代に多くみられる肩の痛みが主な症状の整形疾患です。
しかし、実際は50代には限らず「五十肩」は40代~60代にもみられます。
40代であれ「四十肩」、60代であれば「六十肩」と呼ばれますが、これらも総じて「肩関節周囲炎」であり、原因と症状も同じです。
「五十肩」=「肩関節周囲炎」の多くは自然に治りますが、場合によっては整形外科を受診する必要があることもあります。
五十肩=肩関節周囲炎の症状と原因
50代を中心に40~60代にもみられます。この年代の2%くらいの方が肩関節周囲炎になるとされており、主な症状は肩関節の痛みです。
原因は、肩関節の周辺組織に起こる炎症です。
急性期(発症直後)では強い痛みが出てしまい、肩をほとんど動かすことができず、日常生活に支障が出てきます。
場合によっては、痛みのために肩を動かすことが減ることで肩関節が固くなり、「拘縮(こうしゅく)」といわれる状態になることもあります。
就寝の際も姿勢によっては痛みが出てしまいます。
痛みによってなかなか眠ることができず、睡眠不足となることが多いです。
不安やイライラが募ってしまい、精神面にも影響が出てくることもあります。
なぜ、炎症が出てしまうか?
肩で炎症が起きやすい要因の1つとして、「姿勢の変化」があります。同じ部位へ負荷がかかり過ぎてしまったり、筋力低下が原因で姿勢の修正が行えなかったり、姿勢を保持するための体幹筋の筋力低下などが考えられます。
その結果、背中が丸くなり、猫背の姿勢や肩が前方へ入りやすい姿勢が継続的に行われることにより、肩に負担が掛かってしまいます。
日常生活で気を付けること
「五十肩(肩関節周囲炎)」を予防するために、日常生活でできる予防法を4つご紹介します。
①肩を冷やし過ぎない
夏は暑くてクーラーを入れると思いますが、冷風を体に直接当てたりしていませんか?また、就寝時に部屋が冷え過ぎていませんか?冷風が直接当たらないように調節し、就寝時も温度の調整やおやすみタイマーを利用するなど、肩を冷やさないようにしましょう。
②暖かくする
身体を温めると血行がよくなり、痛みの緩和が期待できます。お風呂も暑いからとシャワーで済ませるのではなく、しっかりと浴槽に浸かって肩を温めることで、肩関節周囲の筋がリラックスして更に血行が良くなります。
③重いものを肩にかけない
痛みの緩和には、肩に負担を掛けないことが理想です。重い荷物を持つことはできるだけ避けましょう。
買い物にいく際は、買い物かごではなくカートを利用し、肩の負担をなるべく減らせるように工夫しましょう。
また、痛みがある方の肩を使わないようにするだけでも違いますよ。
④寝る時の姿勢
寝るときに、- 上向き:肩と布団の間に隙間がある状態
- 横向き:肩を体重で圧迫している状態
できるだけ上向きで寝て、タオルやクッションを体と布団の間に入れることで肩への負担が軽減できます。
五十肩=肩関節周囲炎のリハビリ
五十肩にならない、または、なりにくい体にするにはどうしたらよいのでしょうか?また、どう対策をすればよいでしょうか?結論から述べると、「運動」が重要になります。
もちろん、上述した内容を日常生活で気を付けることも大切です。
しかし、それだけでは解決にはなりません。
予防するには、まずはなりにくい体を作ることが大切です。
肩関節周囲炎のリハビリとしては、
- 振り子運動
- 挙上運動
- 背中洗い運動
- 肩触り運動
注意点として、痛みが強いときは運動は行わないようにしましょう。
痛みを我慢して行ってしまうと、かえって増悪してしまうことがあります。
急がず、痛みを確認しながら進めていきましょう。
以下に運動の方法を簡単にご紹介します。
振り子運動
①椅子や机などを支えにして、前かがみになります。②痛い方の腕を脱力させ、半円を描くように回します。このとき、力を入れずに体を使いながら腕を振り子のように揺らして回していきます。
③右回し、左回しで行います。
重力の力で腕を振り、肩の関節可動域を維持するようにする目的があります。
挙上運動
①上向きに寝転がります。①痛くない方の腕(健側)で痛い方の腕(患側)をバンザイするようにゆっくりと腕を持ち上げていきます。
痛みが強い時は無理せず、行える範囲でやりましょう。
背中洗い運動
この運動はタオルを用いて行います。①痛くない方の腕が上側、痛い方の腕が下側になるようにタオルを持ちます。
②背中を洗うようにタオルを持って、背中へ回します。
③痛い方の腕が背中の上側に来るよう、痛くない腕でタオルを引き上げます。
④引きあげた所で5秒間止めます。
⑤ゆっくりと元に戻します。
肩触り運動
①痛くない方の手で痛い方の腕の肘を持ちます。②痛くない方の腕が床と水平になるように胸の方へ引き寄せます。痛い方の手が反対側の肩に触れるくらい引き寄せてみましょう。
③引き寄せたら5秒間止めて、ゆっくりと戻します。
続いて、肩関節周囲炎予防のための運動をご紹介します。
肩の周りには、たくさんの筋肉がついています。肩甲骨の動きが悪いと、より肩への負担が大きくなります。少しの時間でも良いので、運動やストレッチを行い、筋肉を柔らかくしましょう。
肩の上下運動
①両肩を肩をすくめるようにして上へ引き上げます。②上げた後5、秒保持します。
③力を抜いて肩を下ろします。
肩回し
①両手は下ろしたまま肩を後退させ、胸を開いた姿勢でいわゆる”肩回し”を行います。②これを繰り返します。大きく動かすことがポイントです。
まとめ
今回は五十肩(肩関節周囲炎)の症状とそのリハビリ方法についてご紹介しました。五十肩(肩関節周囲炎)は40~60歳代を中心に多い疾患ですが、日ごろから体操やストレッチを行うことで、ある程度予防することができます。
まずは無理のない範囲で少しずつ進めていきましょう。
「継続は力なり」というように、正しく予防するためには続けていくことが大切です。