先日、メディケア・リハビリ研修会では内田学先生(東京医療学院大学保健医療学部リハビリテーション学科 理学療法学専攻 准教授・理学療法士)をお招きし、「多職種でつなぐ「食べる」を支えるお手伝い~しっかり座ることの大切さ~」を講義いただきました。
今回は、その研修を簡単にまとめてお伝えします。
メディケア・リハビリ研修会「多職種でつなぐ「食べる」を支えるお手伝い~しっかり座ることの大切さ~」
「誤嚥」と聞いた時、あなたはどのようなイメージをしますか?口の機能障害?
喉の機能障害?
確かに口や喉に問題がある場合がほとんどです。
しかし、それに加えて
- 頚部
- 体幹
- 下肢の姿勢
今回は、姿勢による嚥下障害とその改善についてのお話です。
正常嚥下と誤嚥
摂食・嚥下運動とは、下記の一連の流れを言います。①食べ物を口へ取り込む
②食べ物を舌の奥へ送り込む
③舌の奥から咽頭へ食べ物を送る
④食べ物を咽頭へ送り込む
⑤咽頭を通過し、食道へ送り込む
⑥食道を通過する
正常な嚥下とは
正常な嚥下とは、口の中に取り込んだ食べ物を咀嚼運動と一回の嚥下で摂取でき、また、嚥下の後に口腔内に食べ物の残渣がなく、全て食道に移送できることをいいます。
咀嚼の役割
咀嚼運動は、食べ物を咽頭~喉頭に移送する際、嚥下が行いやすい状態する役割があります。嚥下の後は口腔内に食べ物の残渣がなく、一回の嚥下で食道~胃へ移送されることが理想です。
これが口腔内や食道などに食べ物の残渣があると正常な嚥下とは言い難く、誤嚥する可能性が高まります。
加齢と嚥下障害
加齢により身体機能が下がっていくのは当たり前のことです。特に60代以降の入院を伴う肺炎の実に50%以上が誤嚥性肺炎です。
つまり、老化が始まれば、いずれは誰もが嚥下する力が減少し、誤嚥性肺炎を起こす可能性が高まるということです。
誤嚥性肺炎に対して、看護師、歯科衛生士、言語聴覚士、理学療法士、作業療法士、介護職がすべきこと
誤嚥性肺炎になると身体に炎症反応が起こるため、- 安静
- 禁食
しかし、安静にしていると廃用性症候群になりやすく、また禁食すると身体が飢餓状態になって急速にサルコペニアが進行します。
そもそも、私たちは禁食になってもだ液を飲み込む行為を1日に数百回行っています。
つまり、禁食しても嚥下自体がなくなるわけではないのです。
そのため、誤嚥性肺炎が起こっても禁食せず口を使って直接的な訓練を「安全に」行うことが大切なのです。
私たち医療職・介護職はまず、サルコペニアが進行する前、一次予防に力を入れる必要があります。
姿勢と嚥下の関係
椅子からずり落ちないために- 前ずり姿勢
- 頚部の過剰な前屈
- 側方への傾斜
しかし、こういった姿勢は喉だけではなく「舌の動き」に大きく影響します。
まず舌の動きを良くするために、食事をするときには、
- ベッドや車いす上での姿勢を整える
- 骨盤の上に座る
- 足底を平らな面につける
そのためは、骨盤の上に座るための筋力や柔軟性が必要になります。
なぜなら、筋力や柔軟性がないと、せっかく姿勢を整えてもすぐに崩れてしまうからです。
- 下肢・骨盤周りの筋力・柔軟性の強化…理学療法士
- 上肢操作・頭頚部の筋力強化…作業療法士
- 口腔・顔面・咽頭・喉頭の筋力・柔軟性の強化…歯科衛生士、言語聴覚士
まとめ
食は人生そのもの。嚥下の問題は一人ひとり違って多種多様です。
そのため、誤嚥を予防するには
- 広い視野を持つ
- 多職種での情報共有
- 共有の目標認識
多職種が各々の職域を確認し、みんなで摂食嚥下について取り組んでいきましょう!
次回、メディケア・リハビリ研修会「多職種でつなぐ「食べる」を支えるお手伝い」第2弾!「食形態の大切さ」開催
研修会名:「多職種でつなぐ「食べる」を支えるお手伝い②~食形態の大切さ~」講 師:時岡 奈穂子 先生(管理栄養士・NPO法人はみんぐ南河内)
開催日時:2022年1月21日(金)19:00~21:00(終了時間は予定です)
場 所:オンライン(Zoom)
お申込み:https://care-medi220121.peatix.com/
参 加 費:2,000円