医療機器や人工呼吸器の小型化や軽量化が進み、医療依存度の高いお子さまも自宅で過ごせるようになってきました。
そこで求められるのが、お子さまと保護者さまの在宅生活を支える訪問看護です。
とはいえ、在宅での訪問看護は、健康管理や入浴介助、人工呼吸器管理や経管栄養などの業務はもちろん、医療者でも初めて聞くような難病を抱えていたり、保護者さまとの信頼関係をどう構築したらよいのかと悩んだりと、様々な面で不安が多いのも事実です。
そこで今回は、メディケア・リハビリで小児を担当している訪問看護師からよく聞く困り事や不安についてお話します。
「今後、小児訪問看護に携わりたいけど難しそう…」
など、悩んでいるあなたのヒントになれば嬉しいです。
関連記事│「小児訪問看護に関わる看護師の悩み② 子どもの障害の受容ときょうだい児への配慮」
重症心身障害の子どもを看る不安と悩み
医療依存度の高いお子さまは難病を抱えている場合が多いです。しかも症例が少なく、どのような対応をすれば良いのか判断が難しい病気であることも少なくありません。
そのため、お子さまの変化を見抜くことが難しいケースもあり、「本当に安全にケアできているかな?」「このやり方でしんどくないかな?」という不安の声をよく聞きます。
不安や悩みをカンファレンスなどで共有する
訪問看護では、利用者宅に伺うときは基本的に1人ですが、不安や困り事まで1人で抱え込む必要はありません。訪問看護は1人職場のように見えて、本質は集団的支援です。
同事業所のスタッフはもちろん、お子さまに関わっている他事業所の看護師や他職種、関係機関のスタッフも含めて1つのチームです。
チームで積極的に情報交換・共有を行い、疾患について勉強したりケアの手順書を共有したりすることで、解決の糸口が見つかるかもしれません。
そしてなにより、情報を共有することで、より一層お子さまの成長を感じられ、悩みや不安の解消だけでなく、喜びもみんなで共有できるのではないでしょうか。
保護者との信頼関係の構築
お子さまのケアはもちろん、お子さまにとってのキーパーソンであることが多い保護者さまとの信頼関係構築に悩んでいる、という声もよく聞きます。訪問看護は週に数回、数十分~数時間の訪問なので、保護者さまとじっくり向き合う時間が取りにくいこともありますよね。
そのため、信頼関係を築くことが「難しい…」と感じることもあるかと思います。
お子さまに関わるチームで同じ目標を共有する
まずはカンファレンスなどで、保護者さまの希望や要望、時にはお子さま自身の希望を、お子さまに関わる担当者間で情報を共有し、同じ目標に向かって支援することから始めることが大切です。訪問看護は週に数回程度の訪問となるため、どうしても「点」の支援になってしまいます。
しかし、保護者さまとお子さまに関わるチームが同じ目標を共有し、支援することで「点」と「点」が繋がり「面」として支援することが可能になります。
チームが一体となって「面」でサポートしていくことができれば、
・今日は目標のために●●の練習を行いますね
・この動作は火曜日の△△さんと練習している運動と繋がっているんですよ
など、その日の内容を保護者さまに説明するだけでも「この人は私やこの子の希望をちゃんと聞いてくるんだな」と短いコミュニケーションの中でも信頼関係を築く第一歩となるのではないでしょうか。
共有する目標は具体的に決める
とはいえ、希望や要望を聞いて「じゃあ、それを目標にしましょう!」と安易に決めてしまうのはよくありません。なぜなら、たとえば「自転車に乗れるようになってほしい」という希望が保護者さまからあったとします。
その希望を聞いてすぐに「自転車に乗れるようにしましょう!」と目標を決めても、それぞれの専門職が漠然と「自転車に乗る」という目標に向かって動くことになります。
しかし、「自転車に乗る」と一言でいっても、
・サドルに座れるようになればいいのか?
・自転車のペダルを漕いで10m進めればいいのか?
・お友達の家まで自転車で行くことができればいいのか?
・自転車よりも車いすに乗る方が安全でいいのでは?
など、「最終的な目標」がどこなのか、一人ひとりの考えがバラバラになってしまう恐れがあるからです。
そのため、保護者さまから
・どうしてお子さまに「自転車」に乗れるようになってほしいのか?
・なぜ「自転車」がいいのか? 他の手段ではダメなのか?
・「自転車」に乗ってどんなことができるようになってほしいのか?
など、希望や要望だけでなく、「どうしてそう希望するのか?」という「思い」や「過程」の部分もしっかりと聞き取り、具体的な目標を決めていくことが大切です。
まとめ
小児訪問看護では、医療者でも初めて聞くような難病を抱えていたり、保護者さまとの信頼関係をどう構築したらよいのかと悩んだり、様々な面で不安が多くあるかと思います。しかし、その不安や悩みを1人で抱える必要はありません。
訪問看護は元来、集団的支援サービスです。
お子さまに関わる人間が1つのチームとなり、不安や悩みを共有して一緒に解決策を探していきましょう。
メディケア・リハビリ訪問看護ステーションでは、事業所に所属する看護師が随時情報共有できるよう、業務用のスマートフォンとタブレットを会社から貸与しています。
これらのツールは、他事業所など外部の関係機関との情報共有にも役立っています。
また、週1~2回は必ず対面で情報交換や悩み相談ができる場を設けています。
もちろん、それで全てがすぐに解決したり、完璧な回答ができたりするとは限りません。
しかし、お子さまに関わるチームとして一緒に一歩一歩取り組んでいくことで、お子さまにとっても保護者さまにとっても、そしてチームにとってもより良い未来に繋がっていくのではないでしょうか。
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