脳卒中の当事者になった、あるいはその家族で、本人が「ミスすることが多くなった」「ぼーっとすることが多くなった」と心配になることはありませんか?
その症状は、高次脳機能障害の「注意障害」によるものかもしれません。
この記事では、脳卒中後の「注意障害」について、その症状や生活で困ること、その対策方法について説明します。
ぜひ最後まで読んで参考にしてみてください。
注意障害とは?
「注意」とは、環境からの刺激や自分の考え事に対して、適切に意識を向け、維持する能力を指します。
「注意障害」は、高次脳機能障害の一つで「注意散漫で他の刺激に気を取られやすく、集中しにくくなる状態」のことです。
特殊なものとして「視空間注意」などもあり、 右の脳の損傷では、左側の空間への見落としが増えることが知られています。
なお、生活の場では以下のような特徴が見られます。
- 作業中のミスが多い
- いくつも質問をされると返答に時間がかかる
- すぐに疲れる、数ページで本に飽きてしまう
- じっとしていられない、気が散る
また、注意障害には「全般性注意障害」と「方向性注意障害」があります。
全般性注意障害と方向性注意障害の種類について、以下にまとめました。
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①持続性注意障害
集中力の持続が難しくなります。
集中力の強さが変化しやすいため、活動にまとまりがなくムラっ気がみられます。
生活場面では集中力が保てない、ミスが増えると言った様子が見られます。
②選択性注意障害
必要な情報をピックアップして意識を向けることができなくなります。
生活場面では、店の陳列棚から必要な商品が見つけられない、物音に気を取られてしまうなどが挙げられます。
③転換性注意障害
一つのものに対しての注意が強く、それ以外に注意が向けられなくなります。
生活場面では、ずっと同じ話をし続けてしまうといったことが挙げられます。
④配分性注意障害
複数の事柄を同時に行うことが難しくなります。
また、順序立てて作業をすることも難しくなります。
生活場面では、電話をしながらメモをとることができない、家事の効率が悪くなるといったことがあります。
⑤方向性注意障害
目で見た情報を処理することが難しくなります。
見えてる半分の空間を認識できない、見落としが増えると言った特徴があります。
生活場面では、食事の際に左側の食べ残しが増える、歩いていると右側に寄って行ってしまうなどが挙げられます。
注意障害の評価
注意障害の有無と程度は、次のような観察をもとに把握します。
注意障害がある方の評価や訓練では、課題や環境に配慮する必要があります。
- 覚醒度チェック
- 傾眠傾向
- 易疲労性
- 活動性
- 雑音への耐性
- 落ち着き
- 日常生活や仕事での行動観察
- 面接
- 生活場面の観察
- 作業中の行動観察
- 検査
- TMT
- CAS
- CAT
注意障害単体で発症することは稀で、高次脳機能障害が複数見られます。
そのため、上記に挙げた検査のみではなく、日常生活場面の行動観察から、何ができて何ができないかを知る必要があります。
注意障害に対するリハビリ方法
受傷・発症から間もない時期には、意識障害が重なっている可能性が高く、いきなりリハビリを開始するのは適当でないこともあります。
そのため、訓練は以下のように段階付け、環境調整を行います。
- 訓練開始時、積極的な刺激の導入によって注意機能や行動を活性化させる
- 生活環境を調整する(個室から多数室へ)
- 対応する人を調整する(決まった職員から複数の職員へ)
- 訓練環境を整備する(個別からグループへ)
- 注意障害に対する訓練を行う
- 適応的行動スキルの獲得する
また、リハビリ開始の最初の段階では、以下のことに注意します。
- 個室で決まった担当者が対応する
- 短時間で完成できる課題と休息の活用
- 課題の困難度の調整。簡単なものから注意障害の特徴に合わせた課題の選択へ
リハビリの具体的な内容は、以下のような訓練を行います。
- パズル誌、新聞や週刊誌のパズル
- 教育関連テキスト
- 注意力テキスト
- まちがいさがし
- ゲーム(カルタ、トランプ、そっくりさんゲームなど)
- 電卓計算
- 辞書調べ
- 郵便番号調べ
- 電話帳調べ
- 交通路線調べ
- 校正作業
- 集計作業
- 入力作業
前述したように、注意障害には様々な種類があります。
そのため、どの注意機能が苦手かを常に評価し、そこを伸ばすようにプログラムを組み立てます。
注意障害で気をつけること
高次脳機能障害は外からわかりにくいため、誤解を受けたり、孤立したりしがちです。
日々の支援と同様に、理解者を増やしたり、地域で相談にのったり、身近に頼れる関係を作ったりすることが重要です。
また、本人同様に、家族に対しても不安や負担の軽減を図る支援が必要です。
家族も突然の事故や病気による生活の変化に対応しながら障害を理解し、その現実を受け止めるには相当の時間を要します。
混乱を避けるために、支援者間で情報を共有し、対応を統一することが重要です。
注意障害の基本的な対応の考え方
まずは、上記で示した評価を行い、その人は何が苦手で何が得意なのか、何ができて何ができないかを明らかにします。
本人にも理解してもらうと更に効果が高まります。
その上で低下した機能を訓練・リハビリなどで維持しようとすること、日常・社会生活において低下した能力はなるべく使わなくてもよいように生活を組み立てる(負荷をかけない、別の能力や 代償手段で補う)ことが大切です。
さらに、残存能力を活用して、日常生活の中にその人の役割を見つけられるとよいでしょう。
まとめ
最後までご覧いただきありがとうございました。
この記事では「注意障害」とその対応について紹介しました。
「注意障害」には様々な種類があり、その人によって苦手になる部分が異なるため、本人の症状の特徴に合わせて訓練していく必要があります。
また、訓練だけではなく、生活の場の調整や周囲の理解を得て支えていく必要があります。