訪問看護ステーションでは、看護師だけでなく、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士がご自宅に訪問し、包括的に在宅で過ごされているご利用者に関わることがあります。
そこで今回は、訪問看護ステーションからのリハビリ(理学療法士/作業療法士/言語聴覚士)についてご紹介します。
リハビリではまず、お身体の状態を評価します。
評価項目は多岐に渡り、例えば全身の筋力や関節の機能のほか、
- ベッドからの起き上がりができるか?
- どのくらい歩けるか?(杖は使うか?歩行器の方が良いか?)
などの動作を確認します。
社会生活を送る人間が日常的に行う動作はADL(Activity of Daily Living)と呼ばれ、大きく分けて、
- 食事
- 排泄
- 整容(歯磨き、洗面、着替えなど)
があります。
これらの項目について、
- 介護が必要な動作
- 日常生活で困っていること
などを中心に、ご本人・ご家族・ケアマネジャーにお聞きしながら、
- 実際にどの動作のどこができないか?
- 逆にどこをお手伝いすればできるようになるか?
などを考えながら、動作練習や介助のコツをご本人やご家族にお伝えします。
在宅でケアを行う上で大切なことは身体的な評価ですが、更にもう1つ大切にするべきことがあります。
歩んできた過去
前述のように、リハビリを行う前に大切なことは「評価」です。
評価は、その人にどんな関わりが有効なのか? を把握する為に大切な過程です。
しっかりとその人を評価をすることで、その人に合ったサービスを提供することができます。
しかし、根源的に最も大切なことは、その人が「歩んできた過去」です。
ご利用者の現在の姿を見ることはもちろん大切ですが、現在の姿だけでなく、過去も同時に知ることで、よりご利用者のことを理解できるようになります。
なぜなら、現在の姿は「歩んできた過去」が作っているからです。
- 過去にどんな人に出会い
- 過去にどんな体験をして
- 過去にどんな仕事をして
- その時にどんな人たちが周りにいたのか
全く同じ体験をしている人は、この世に存在しません。
だからこそ、現在の姿や価値観も無限に存在しています。在宅で関わる上で、まずはご利用者一人ひとりがどんな価値観を持っているのか? を知ることが重要です。
「聴く」ことから始める看護・リハビリ
リハビリを含む看護を行う中で、「評価」の後に行うことが「目標設定」です。
目標設定とは、「ゴール」を決めることです。
そして、その時に大きなヒントになるのが「価値観」です。
例えば、ご本人のやる気をより高めるために、このように短期の目標設定をすることがあります。
- 夏に行われる孫の発表会に歩いていく
- グランドゴルフを友人と一緒に楽しむ
- 子供が一番好きなカレーを作れるようになる
そんな時に目標設定のヒントになることは、歩んできた過去から作られたその人の「価値観」です。
そのためには、その人の想いを「聴く」ことが大切になってきます。
聴くことで、その人がどんな人なのかを少しずつ理解できるようになります。他人の気持ちを理解することは簡単ではありませんが、その人のことを自分事として捉え、地域の現場で関わるためにしっかりと聴き、その人の気持ちに近づく努力をすることがまず大切になります。
その人をしっかりと知り、その人に合ったケアを
一人ひとりの過去の経験は異なり、現在の価値観も一人ひとり違います。
当然、望んでいる内容も異なってきます。
中には「別に歩きたいわけではなく、ただ買い物に行きたいんです」という方もいらっしゃいます。
そんな「心の声」をしっかりとキャッチすることから始まります。
買い物に行くという「ゴール」がある場合、
- 車椅子でも良いからスーパーに行きたい人
- 杖で歩いてスーパーに行きたい人
- 一人で歩いてスーパーに行きたい人
- カッコ良く歩いてスーパーに行きたい人
その人を知ることによって、関わり方は全く変わってきます。
人の価値観は十人十色。誰にでも万能なケア・リハビリは存在しません。
歩んできた過去を含めて、「その人がどんな人なのか?」を理解することが、身体の機能や動作以外で特に重要になります。そして、その人に合った目標とは何か?を考え、その人に合ったケアを提供しています。
現在の身体の機能だけを評価するのではなく、「その人とはどんな人なのか?」ということをしっかりと評価することが、生活期でのケアを提供する上ではとても大切なことになるのです。